そう。俺はその時つい寝てしまったのだ。
思いつく理由は恐らくつい2日前に起きた《Golden Apple》事件と日系通り魔事件だろう。二つの大きな事件が重った事。そして何としてでも事件を解決しなくてはと考えたあまり知らず知らずの内に神経を使い果たしてしまって昨日になって急に疲れが襲ってきたのだろう。
つい自分が情けなくて手を頭に置き項垂れてしまった。
「はぁ。何やってんだ俺……」
ついボソッと声に出た。
「……んっ、…ん…」
ぁ、やべ、起こしちまった?
そっと菜々の方へ顔を向けるとどうやら杞憂だったらしく、ただの寝言だったので、とりあえずホッとした。
「ま、身体が目的なんかじゃねぇんだし、俺たちは俺たちのペースで……だな。」
菜々の頭を撫でながらそう思った。
まだ眠っている可愛い姫のおでこに一つキスを落とす。
それでも早くその日が来ればいいなと待ち遠しくもあった。
それからほんの20分程度で菜々は目を覚ました。
「……ん……しん、いちしゃん?」
少し重たそうに瞼を開けて、俺を見る。寝起きで寝ぼけてるのか、呂律が回っていないようだ。
「菜々?…もう起きるか?」
目線を菜々に合わせる。
「んぅ……、今何時?」
「んっと、もうすぐ9時になるな。」
「……んじゃあ、あと15分このままがいい」
そういって俺の方にすり寄り、胸に顔をうずめてきた。
なんでこいつはこんな可愛い事をいとも簡単に無意識で出来るのかが俺にはサッパリ分からない。
俺の居ない間、ここロサンゼルスでもきっと知らないうちに男どもを魅了し続けてたのかと思うと溜息が出る。
それに、こんな事をされると先程固めた意思だって崩れそうになる。
小さくハハと笑った声に菜々が微笑んだ気がした。
どうせ俺の心境を知るよしもないんだろうなと思いつつ菜々の背中に腕を回して抱き締めた。
コイツの為なら人生だって命だって
惜しくない。
神に誓って俺はお前を裏切ったりしない。まるでそれを証明するかのように菜々の頭に誓いのキスを落とした。
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