「これがお前の癖だ。この癖がお前に邪魔をする。だから突然当たらなくなった。……いいか?これはこうするんだ。」
冷静にこの人は教えてくれてるみたいな感じになってるけどね、
あたしは全然冷静になりたくてもなれないんだよ。
「ちょっ!待って。これじゃ冷静に撃てないですって、」
私は今、伏射で的を狙ってるから
自然と伏せの格好だ。
なのに、この人はなんとその上に被さってきて……言葉通り、身体に教えてくるのだ。
正直。彼はとても魅力的だ。
顔、って言ったらそこで終わりだけど、なんというかその独特な雰囲気に惹かれるのだ。彼の醸し出す独特のその雰囲気に。
「何か問題でもあるのか?」
「ある!あるわ!いい?魅力的な男性が上に乗っかってるのよ。私の心臓の音が聞こえちゃうじゃない。……って……ああ!いや、違っ!……違わないけど、」
ついまくしたてるように言ってしまったが、自分は今ものすごく恥ずかしい事を言ってしまったんではないかと急にこみ上げてきた。
うう。バカか?自分こんなバカなのか?
つい目を合わせたくなくてソッポを向く。
「ハハ。君からみて俺は魅力的に映るのか。嬉しいが、それは君の勘違いだな。何故なら君の方がよっぽど魅力的に見える。」
「っ!……お世辞なら間に合ってます。」
「俺は世辞が苦手なんだ。だから素直に受け取ってもらいたいんだが。」
なんだこの茶番は。
言えば言うほど墓穴掘るだけじゃないか。
「………貴方が退けてくれた方が手っ取り早く覚えれるって話です!」
「それは残念だが無理だな。俺が君の身体に教えたほうが早い。」
「だから、いちいちややこしい言い方しないで下さい!」
なんなんだ。
結局この格好なんじゃないの。
私の上に覆い被さっているこの男。
時折、彼の指が触れ、喋るごとに吐息が耳元に掛かる。
「………っ。」
くすぐったい。なんかぞくってするし。
「"暗夜に霜が降る如く"知ってるか?」
突然彼が話しかけてきた。
「…それってどういう意味ですか?」
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