「菜々起きてくれ!早く準備してどっか行こうぜ!」
「………。」
そうだった。私の彼氏さまはいつも唐突すぎるのが問題だった。
「っあ、てめー!寝返りして無視すんな!」
ガバッーーーー。
布団、とられた。
自分の体温と同じになった布団の中は幸せの宝庫って言っても過言じゃないのに。
エアコンで寒くなった部屋に布団無しは少し肌寒かった。
「寒い…ねむたい。くっそ。じゃますんな、推理馬鹿之介。……返せバカ。」
要件のみ言ってから新一から布団を取り返す。
「なッ、バカ……だと、!?」
「………。」
「って何ちゃっかり布団取り返してんだよ!それに俺は推理馬鹿之介じゃねぇ!早く行くぞ!」
ちぇ、また布団取られた。
それも今度はもう簡単に取り返せないように廊下に投げ捨てられた。
はぁ。もういいよ。どうせ目覚めちゃったし。
「今何時よ?」
「7時。」
「………。」
「………。」
「はあ!?7時!?学校もない日なのに!?」
何故7時!?
土日普通12時まで寝るのが普通の女ですけど、なにか?!
「だって女って用意が長ぇじゃん。それに、朝メシも食わなきゃだし、
今日は連れて行きたい場所がいっぱいあるんだ!」
こうして朝早くからの私達のデートが始まった。
***
「うん、まぁやっぱこの服だよね。」
クローゼットの中から取り出したのは新一がこの前選んでくれた、緑とピンクのフリルが掛かった可愛いらしいワンピース。
その服に合わせて自慢の赤みのかかったロングウェーブを二つに分けてツインテールにし、ベレー帽を被って、靴は玄関に置いてある緑のパンプスに決めて準備はオッケー。
「……新一、可愛いって言ってくれるかな?」
鏡の前で、自身に問いかけてみた。
普段とは違うデート用の自分。
「もう下に降りなきゃね。」
鏡は答えを言ってくれないけど、
「新一、遅くなってごめん」
私に背を向けるてソファーに座っている新一に呼びかける
「ん?あぁ、そんなに待ってねぇ………よ……」
私を見た瞬間の新一の顔がたまらない。
何を言ってくれなくても目は口ほどに物を言う……みたいに、
頬の紅さは口ほどに物を言う。
「ほんとに?よかった!じゃあ行こっか」
新一の態度が異常に嬉しくて、少し上ずった声になってしまった。
玄関の方に進もうと思い、新一から背を向けた刹那ーー。
パシッ!
左腕を引き寄せられそのまま囁かれた。
「菜々……その……すげー可愛いよ。」
「………え。」
余りの不意打ちに自分でも分かるくくらい顔を紅くさせ、体が恥ずかしさで硬直してしまった。
今度は頭にポンッと手が乗った、
「…行くぞ」
そして固まった私をみて、クスッと笑った。
余裕が生まれた彼は手を恋人繋ぎにし、体を引っ張ってくれた。
彼は、本当に世の女性をめろめろにさせる天才だと思う。
もう。なんなんだコイツは!
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