Rojo | ナノ

Rojo

お父さんは私に様々な知識を与えてくれた。

『いいか?菜々?銃で相手を狙うとき、相手の弱点を探してはダメだ。焦って何も出来なくなって、逆にこっちに隙ができてしまうからな。』

知識が増えることは楽しかったから大好きだった。
数少ない家族のふれあいの意味合いや
何より覚えることでお父さんに褒めてもらえるし、もっと知りたくなる。

『でも、相手の弱点が分からなかったら倒せないよ?』
『相手の全体を見ればいい。そうすれば相手の癖や、一瞬の隙を見つけられる。それと分かっているとは思うけど、いいか?いつも冷静沈着でいろ。焦っていることを絶対に悟られるな。分かるよな?』

でも、だんだんお父さんの姿がなくなっていく。
影がお父さんを飲み込んでいく。
待って。待って。行かないで。おいていかないで。

「……菜々!」

ハッ……!

ガバッーーーー。

「大丈夫か?だいぶ魘されてたけどよ?」
「新一……。大丈夫よ。」

最近夢見が悪い。
ほぼ毎日、両親の夢を見る。
夢というより……過去の記憶と言った方が正しいのだが。
今日はお父さんとの暖かい昔の記憶だったからそこまで悪くないけど、
新一が事件を解いている姿を見た夜には、お前も決意を決めろと言われてる見たいにあのお母さんの死んだ日の夢を見る。

「全然大丈夫じゃねーだろ?魘されてたし。……って頬に涙流れてんぞ。」
「えっ?……っあ本当だ……。」
「本当だ……じゃねぇ!まさか、何時も怖い夢とかみるのか?」

やばい。こういう時の新一はやけに鋭い……っていつも鋭いけど、
落ち着いて。冷静に。ポーカーフェイスで。

「違うよ。今回はたまたま。新一だってたまには見ちゃうでしょ?怖い夢くらい。それと一緒だから。」
「ホントだな。信じるからな?何かあれば何時でも俺に言え。イイな?」
「うん。分かってる。ありがとう。」

お父さんやお母さんが夢の中で伝えたいことは恐らく1つ。

そろそろ腹を括ろうか。

***

「ゆきちゃん、優作さん、私なりに進路を決めたから聞いて欲しいの。」

新一が部活で家に居ない時を見計らって有希子と優作に打ち明ける事にした。

「じゃあ、菜々くんの将来の夢を聞かせてもらおうかな。なぁ有希子。」
「ええ。菜々ちゃんの夢だもの。精一杯お手伝いさせてもらうわ!」
「実は……」


「え!?CIA になりたいの!?FBI じゃなくて?」
「うん。お母さんはFBIだったでしょ?だから多少ならお母さんが集めてた資料があるけど、組織を潰すだけの決定的なものはないの。でも、CIAという別の対象、視点から見たらどうかなって。
一つの焦点ばかり見つめても答えが出なくても、別の観点から見たらそれは別のシルエットになり得ると思うから。」
「そう。」
「だから、アメリカのロスに留学をしに行く。飛び級制度をフルに活用して、空いている時間は射撃の腕を磨きたい。出来るだけ若いうちにCIAに入りたいの。」

熱く語った私に対して有希子達は真摯に受け止めてくれた、

「じゃあ早く準備しなくちゃね。いつからにする?どの学校にしちゃおっか?忙しくなるわ!」
「よく一人で決めたね。凄く勇気のいることだし、不安もあったはずだ。とくに命を懸ける仕事は。」

有希子には強く抱き締められ、優作は菜々の頭を優しく撫でた。

反対もせず、逆に応援され、私は一生この人達に敵わないと思ったし、
期待に応えたいと強く思った。

***

「はぁ!?ロスに行く!!?」
「ん、いつ帰ってくるか分かんないから、一応、新一には伝えとこうって思って、勝手に決めてゴメン。でも、行くって決めたから。」
「……いつ行くんだ?」
「アメリカは日本と違って基本9月から新学期だから、今は8月中旬。つまり……一週間後の今日かな。」

苦笑いをしながら新一にその旨を伝えると、
新一が珍しく、ゆきちゃんや優作さんの前なのに強く抱きしめてきた。
普段なら恥ずかしがってやらないのに。

「新一………泣いてるの?」

小さく嗚咽らしきものが聴こえたような気がした

「バカ。泣かねぇ!」
「ふふ。そういう事にしとく。」

新一の涙。初めてかもしれない。

「理由は聞かないでやる。でも、向こうでなんかあったらすぐ連絡しろ。
いつでもこの家に帰ってくればいいんだからな。だから思う存分頑張れよ!」

絶対気になるクセに理解する振りなんかしちゃって。
でも、ありがとう。聞かないでくれて。
やっぱり新一はゆきちゃんと優作さんの息子だわ。

そして、さすが私の彼氏さま。

その夜、数え切れないほど沢山のキスと愛の言葉を頂いた。
PREV / NEXT

- 8 -
TOP MAIN
「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -