ガラッと勢いよく扉を開く。
「菜々!?」
教室に戻ったけど菜々の姿がない。
確かに教室に戻るって聞いたのに。
「菜々戻ってきたか!?」
ドアの近くにいたクラスメイトに聞いた。
「え?神崎さん?みてないよ。」
「くっそ!」
あの時あの二人を放っておいても、菜々と一緒に教室に戻っていれば……。
あんな菜々の冷めたような、
悲しそうな、助けを求めているような顔。
俺は菜々が好きだ。
だからお前の力になりたいのに。
***
「ハアッ……はぁ…菜々!やっと見つけた!」
思い当たる所を手当たり次第探していったがおらず、
仕方なくこの古びた校舎の空き教室を見て回ってようやく見つけることができた。
「あー、えっと……ごめん。すっごく探したよね?でも、一応教室だよ?へへっ」
隅っこの方にいた菜々が苦笑いを浮かべながら申し訳なさそうに謝ってきた。
「バーロー怒ってねぇよ。心配しただけ。」
そう言って菜々の隣に座り菜々の頭を抱き寄せた。
頭が新一の首と肩の間にあり、
すっごくドキドキしてきた。
いつも新一は優しい。
でもこんなにも距離が近いとやっぱり意識をしてしまう。
「……ごめんね新一。園子の言う通りだよ。蘭に勘違いさせちゃったし、蘭といる時間も減った。新一は蘭の事が好きなのに。……私のものじゃないのにね。」
「……お前のもんだよ。俺は。」
「へ?」
「だから、……だぁ、もう!俺はオメーが好きなの!」
すっごい顔を赤くした新一がそこにいる。
指だけを私の方に向けたまま、そっぽを向いている。
「新一、顔赤い。ふふっ」
大事な場面なのだろうけど、ついその姿が可愛いくてつい笑ってしまった。
「……バーロ。夕日のせいだ。」
昼休みのこの時間帯に夕日なんかないのに。
思わずふっと笑ってしまった。
「俺が好きなのは蘭じゃない。菜々だ!誰よりも菜々が大切だ。
だから俺はお前の物だ!分かったか!?」
「………うん。」
反射的に頷いてしまった。
「だっ、だから、お前は何も悪くねぇというか、」
「ふふっ。………アハハハ!」
「なんで笑う!」
やっとこっち見てくれた。
「いや、可愛いなって思って」
「な!お前!男に可愛いとかいうな!」
なんか顔染めたままぐちぐち言ってる。
あー、もう。
「ふふ。……私も。私も新一が好きだよ。」
え?と心底驚いた様な顔をし、
その後飛ぶようにして新一が私を強く抱き締めた。
「ホントか?ホントなんだよな!」
「ははっ!ホントだって。……大好き!」
そう言って新一を見つめると、
「……っ。菜々。」
ふいに瞼に影が落ち、唇に柔らかな熱が触れた。
感じる………温度の違いを。
唇同士が軽いリップ音を鳴らしながら離れ、
お互いのキョリが残り3センチのところで、
「俺の方が好きだから。」
と囁かれた夏の終わり頃
それが私のファーストキス。
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