相変わらずブスッとしたままで、学校へ行く途中もあまり笑わず、仕方なく行くオーラがすごかった。
「ハハ。オメーちょっとは笑えよ。」
「うっさい。」
俺が菜々の手を引き、休憩時間も菜々と居る時間を増やした。
休憩時間に天気が良いので校庭の木の下で菜々と新一が2人で日向ぼっこをして寛ろぐ。
「ねぇ?新一?折角休憩時間なんだしサッカーしなくていいの?別に行ってきたっていいよ?私ココにいるし。」
「バーロー。俺はホームズが読みてぇからココにいんの。それにサッカーならいつでも出来るしな。」
余計な心配すんな。といいながら頭を撫でてやる。
そのほのぼのとした雰囲気に菜々も自然と笑顔になる。
「そっか。」
「……おう。」
新一はその可愛いすぎる笑顔にやられ顔を真っ赤にさせた。
「新一。大好き」
「…別に。俺だって、オメーのこと嫌いじゃねーし。」
だが、その様子に園子が黙っているはずもなく、蘭を連れた園子は鬼の様な形相で歩いてきた。
「ねぇ。あんた達!まさか付き合ってないでしょうね?」
いきなりの園子の登場に動揺したものの菜々に迷惑をかけないように問いに対して答えた。
「はぁ?何バカなこと言ってんだよ?どうでもいいだろ?そんなこと。」
「どうでも良くないわよ!蘭はどうするのよ!?まさか浮気するわけ?」
「ちょっと!園子!浮気って別に私と新一は……」
蘭が真っ赤な顔をして否定に入る。
「別に蘭と付き合ってるワケじゃないし。俺の勝手だろ?それより大声を出すなよ。菜々がビックリするだろ。」
「っな!新一君は蘭より菜々を選ぶって言うの!?ずっと蘭は新一君が居なくて寂しい思いをしているの!菜々ばっかりと一緒にいたら蘭が可哀想よ。」
園子のその言葉を聞いて、私は一瞬にしてイラついた。
何?蘭だけが可哀想ですって?
ただ新一に構って貰えないくらいで?
じゃあ何?私は可哀想じゃないの?
蘭は沢山友達もいるし、家族もいるじゃない。
私には新一しかいないのに。
新一を取らないでよ。
色んな思いがごちゃ混ぜに頭の中によぎる。
確かに私の両親の事は誰にも言ってない。たとえそれが蘭や園子だとしても。
そして、これからも言うつもりもさらさらない。
お母さんは死んだ。
でも、それを言葉にして言うほど私は母の死を認めるほど大人じゃない。
急に場違いな気がしてその場を去ることにした。
「……新一。もう行くね。蘭達と良く話した方がいいよ。……でも、余計な事は何も言わないでね。」
「ちょっと菜々!余計な事って何よ?余計な事って!それに何処に行くの、話はまだ終わってないのよ!」
「きょーしつ。んじゃ話は私抜きでよろしく。」
手をひらひらっとさせて静かに去った。
「何あれ!菜々ってあんなに感じの悪い子だっけ!?」
「落ちついて園子。菜々だって機嫌の悪い時くらいあるわ。」
……コッチだって蘭みたいになりたかったわよ。
***
「新一君。よく菜々といられるわね。なんか性格キツいし想像と違ってたわ。」
「そういえば、なんか最近菜々がおかしいの。新一の呼び名も新ちゃんから新一に変わってたし、何かあったのかな?ねぇ?新一何か知って……」
「おい。おめーら。なんであんな風に菜々を責めた?特に蘭。気づかねぇのか?機嫌が悪い?今まで菜々の何を見てきたんだよ。……悪りぃけど、しばらく菜々に話かけるな。」
「せっ、責めてるわけじゃ……」
菜々が機嫌が悪かった為にした行動として判断した蘭と園子。
最近ようやく明るくなり始めたのにまた逆戻りだ。
ったく余計なことをしてくれた。
「し、新一っ!菜々一体どうしちゃったの?何かあったのかな。私は何をしたらいいかな!?」
菜々の後をついて行こうとした新一の腕を強く握り引き止め、必死に新一に問いた。
それは純粋に菜々を心配する気持ちは勿論あったが、それ以上に新一に"使えない自分"というレッテルを貼られるのが嫌だったのだ。それに菜々を追いかけるその姿を見たくなかった。
「……何があったのか聞くのは今の菜々にとって酷な事なんだ。ほっといてやってくれ。」
蘭の腕を振りほどいて菜々の元へと駆け出す。
「あっ!新一!」
蘭の制止の言葉は俺には届かなかった。
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