鎹鴉に案内をしてもらいながら煉獄家へ向かう。
数ヶ月しばらく横たわった状態で動くこともなかったせいか少し歩いただけで息切れしてしまうのが少し悔しいと思っていた。


道中話し相手もおらず、肩に乗った鎹鴉に声をかけるが返事はしてくれない。

あたり話すのは得意じゃないようだ。

ただ指示は的確にしてくれるようで、仕事が出来る鎹鴉で苗字は良かったと感じている。


「ココダ」



急に鎹烏が話したと思えば目的の煉獄家に着いたようだ。

蝶屋敷に負けないくらい大きな家で少し圧倒される。

恐る恐る中を覗くとそこには

「(煉獄さん小さくなってる…?)」


玄関の前で掃き掃除をしている小さな師範がいた。
不思議に思いながらも失礼しますと声をかけると小さな師範はこちらに気付き深くお辞儀する。


「苗字名前さんですか?お待ちしていました。僕は煉獄千寿郎といいます。兄がお世話になっております」


煉獄千寿郎と名乗る小さな師範はどうやら師範の弟のようだ。
師範とは打って違い少し弱々しいというか、落ち着いているというか…と苗字内心感じていた。



でも丁寧で礼儀正しい小さな師範だなとも思っていれば家からはこれはまた老けた師範のような人がこちらを見ていた。

「父上」

千寿郎が口にしたのは「父」。
師範と千寿郎の父である煉獄槇寿郎。



「またか、どうせお前も大したことない、くだらん」


槇寿郎はそう言って苗字を後にしようとしたが、苗字は後ろ姿に向かって勢いよく頭を下げ声を出す。


「継子として精一杯杏寿郎さんをも超える柱になります!よろしくお願い致します!!」


その声が届いたかどうか定かではないが槇寿郎は振り向きもせずに行ってしまう。


しばらくして頭をあげる苗字。
冷静になってみるととんでもない事を言ってしまったことに気付き少し後悔をする。


頭を上げきると更に苗字は後悔した。

「よもや、俺を超えるとは!良い心がけだ!」

それからまた更に後悔することになる、稽古が始まった。


あれからすぐに師範から木刀を受け取る苗字。

見ているから良いと言うまで素振りをしろと稽古が始まる。

病み上がりだし、なんだかんだ優しそうだし、素振りくらい楽勝と思ったのが運の尽き。

素振りをして少しすると体制や向きや細かいところを指示され、直し素振りを続ける。

「(あれ、私どれくらい素振り続けてる…?)」



師範である煉獄は良いとも言わずただひたすらに苗字の素振りを見ているだけで何もしない。

ただ少し体制が崩れるとピクリとする師範の姿が見え慌てて体制を直し素振りに集中するというのが何回か続く。
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とっぷ