十二鬼月でもない、鬼を相手に苗字は戦う誠意を失ったどころか生きる気力も失う。

鬼はそれを察したのか、鋭い爪で苗字の下腹部を突き刺し貫通させる。
身体は自然に苦しみうめき声を上げる。

その姿を見て鬼はどこから喰おうか考えを不気味な笑みをしていた。

そんな笑みをしているのもつかの間、鬼の首は一瞬で切り落とされた。

すぐに鬼は消滅して苗字に貫通した爪と指も消え血が流れる。
それと同時に全ての気力を失い、後ろに倒れ込むが背中から包み込むように身体を持たれた。


「師範…」

自身の身体を抱えたのは派手な髪色をしており、真っ直ぐな眼差しをした間違いなく師範の杏寿郎である。

「すみません、私もう…」

「なにも言わなくていい、蟲柱のところへ行くぞ」


この時考える余地もない苗字は気付かなかったが、杏寿郎は嫌な予感が離れなかった。


しばらくして名前は目が覚めると、もう何度ここに来ただろうかと蝶屋敷であることを察した。

起き上がろうとすると下腹部に激痛が走る。

少し声がもれ、完全に身体を起こす前に自身の痛みを感じる部分に触れる。
そこには包帯が巻かれており、処置されたことが分かる。

だがこの箇所はまさかと唾を飲んだ。

痛みに耐えながらも身体を起こすと丁度胡蝶しのぶと、師範が病室に足を運んだ。

「あら、目が覚めましたね」

胡蝶は微笑みながら苗字のベッドの横へと椅子を出して座る。

「すみません、またお世話になってしまって」

「いいんですよ、それよりも名前さんには伝えたいことがあります」

胡蝶の微笑みから少し意味がありながらも悲しそうな顔をした。

「すみませんが煉獄さんには少し席を外してもらいましょうか」

胡蝶は杏寿郎に視線を送り、少し小さい声で「うむ」と返事をして後ろを振り返った。


「待ってください」


名前の言葉に杏寿郎は足を止め名前方へ振り返る。


「師範にも、居てもらってはダメですか」


その言葉に胡蝶は少し驚くも、すんなりと受け入れまた視線を杏寿郎へ向けると頷かれる。


一息置き胡蝶は真剣な眼差しをして名前の目を見る。

「名前さん、落ち着いて聞いてください。」

名前は胡蝶の目をしっかりと見てこくんと頷く。

「今回の鬼との一戦で貴女は下腹部を刺されています。この下腹部ですが、子宮にあたる箇所です。」

この胡蝶の言葉により名前とその師範は既に確信を得ていた。

「名前さん、貴女は妊娠…子どもが出来ない身体になりました。また、それにより月経も来ません。」

名前はただただ胡蝶の言う言葉をしっかりと聞いて受け止めることしか出来なかった。

「もう察していましたよね、ごめんなさい」と胡蝶は名前の頭を優しく撫でる。

「いいんです、ありがとうございます」と言い名前は微笑んだ。

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