名前は目を覚ますと、同じ布団で師範の腕の中で眠っていたことに気づいた。 昨夜は杏寿郎が師範として自身が亡くなったときの話と、酒に酔った勢いで名前に好きだと告白をする。 名前も師範が師範である以上に大切な存在だと気付き2人は愛を確かめて眠りについていた。 「起きたか、名前」 名前は杏寿郎の腕の中でゆっくりと顔を上げると、寝起きであろうともしっかりと目を見開いた杏寿郎がこちらを見ていた。 「あっ、おはよう…ございます…」 「起こすと悪いと思いこのままにしていたがもうよいだろう!」 杏寿郎は素早く起き上がろうとした為、その前に自身の頭が飛ばされないようにと先に起き上がる名前。 「(あれ…恋人になったらまず起きたら口付けとか交わさない?いつもと変わりないような…)」 名前は心の中で考えていると嫌な予感が過った。 「師範、お聞きしても良いですか…」 「なんだ!」 恐る恐る師範の杏寿郎に声をかける名前。 「昨夜のこと、どこまで覚えていますか?」 すると杏寿郎が答えるまで少し間が空いて不思議な時間が一瞬存在していた。 「炎柱を継ぐ話をした!」 「それから?」 「寝た!」 名前は目が点になってしまう。 杏寿郎は酒に強い訳ではなく、いつもより多く飲んでしまっため酔いのせいで記憶をなくしてしまっていた。 ただし「名前で呼ぶ」ことに対しては身体が覚えていたのか「名前」と杏寿郎は呼んでいた。 名前は起きてすぐにどっと疲れた感覚を感じては落ち込んだ。 そういえば、と名前は気づきまだ入っていなかった部屋にある露天風呂に少し入ってくると杏寿郎に告げて風呂へと向かった。 その姿を杏寿郎は優しい目で見守る。 「(すまない、名前。俺はまだ未熟だ。もっと立派な男になってから、酒の力を借りずに改めて告白させてくれ。ただ、今は名前で呼ぶワガママだけ聞いてくれ…)」 一方名前はせっかく恋人ができたと思ったのにと不貞腐れていた。 「(鬼殺に集中するべきだろうけど、私だって年頃の女の子だし、恋愛とかやっぱりしてみたいし、まして昨日告白までされたのに覚えてないなんて…)」 「あー!もー!!!」 名前は露天風呂で叫び、杏寿郎は少し驚いていた。 名前は風呂を済ませ、2人は普段着へと着替え部屋で朝食をとる。 いつも通りに美味しいと表す言葉を交わしながら食事をとるものの互いに「かっこいい」「かわいい」と言う気持ちが生まれ、察されないようにして過ごした。 宿を後にして、煉獄家へ戻ることに。 道中名前は杏寿郎の顔をちらちらと見ては「整った綺麗な顔」と見惚れていた。 |