名前は目を覚ますと見たことがあるような無いような天井が視界に入った。

ハッとして上体を起こすと横には宇髄天元が居た。

「えっ、あれっ、宇髄さん…??」

「大丈夫か」

そこに居るのは紛れもなく音柱の宇髄天元であった。
名前は自分を見れば綺麗な浴衣を着せられており、この状況に驚きを隠せずあたふたしている。
宇髄は察したのか名前を見つめたまま、話し始める。

「実はお前が監禁されてから、嫁に見張りを頼んでいた。」

「えっ、嫁って…」

「3人交代でな。何かある度状況報告してもらい、道中で倒れたお前をここに連れてきてもらった。」

「呼吸を使ったせいで1度見失ったらしい」と続けて言うと名前は困惑しながらも少しずつ時間をかけながら状況を把握していく。


「と、とりあえず、状況はわかったのですが何故そんな事を…」

名前は申し訳なさそうに下を向いて話す。
すると宇髄は名前の顔に近づき、耳元で言葉を発した。


「お前が好きだからだよ、他に理由あるか」


「えっ、待ってくださいそんな私なんか好きなわけ…!」

「正直初めて見た時から気になってた。相談に乗った時は炎柱がこんなにも尽くされて羨ましいと嫉妬もしたくらいだ。」

嘘をついているような感覚は一切名前にはなかった。
杏寿郎から逃げてきたばかりの私がこの人と結ばれて良いのかと、そもそも身篭ったうえに、相手には嫁がいると考えていると頭が破裂しそうになる。


「とりあえず落ち着け」

「で、でも…」

宇髄は名前の隣にあぐらをかいて座り、名前の頭を撫でた。

「全部知ってる。炎柱の子を授かった事も全部。あと知らないのはお前の俺への気持ちだ。」

頭を撫でられたことで手の温もりを感じ、名前は安心して涙が零れる。

「な、泣くなよ」

涙する名前を見て少し動揺をする宇髄に対して涙ながらもしっかりと目を見た。

「私…宇髄さんのこと好きみたいです…」

名前のその言葉を聞いた宇髄はニッと笑い自分の胸元へと名前の頭を抱き寄せた。

「好きみたい、じゃなくて好きなんだろ」

「は、はいっ…好きです、大好きですっ…」


涙を流しながら好きと連呼する名前の表情に少しときめきを感じながらも、理性を保ち名前の頭を撫でながら話し始める。


「残念ながら俺の里の風習で4人目の嫁とはさせてやれねぇけど、内縁の妻くらいにはしてやってもいい。子どもも産みたいなら産んで良い。俺も面倒はみる。どうするよ」

「私を…苗字名前を妻にしてください…子どもも産ませてください…本当に、ありがとう…」

名前は嬉し涙を流しながら気持ちが落ち着くまで宇髄の胸元で抱かれていた。


数ヶ月後には名前は無事出産を迎え、元気な男児を産んだ。
顔はとても炎柱に似ているが、髪の色は黒だった。

名前は子育てのこともあり、鬼殺隊に戻ることはせず宇髄の内縁の妻のとして宇髄家に子どもと住むこととなった。

また、炎柱からの接触を避けるために常に3人の嫁の誰かが名前の近くにいる状態を保った。


後日炎柱と音柱が会う場面となると、炎柱は特に苗字名前のことを音柱に聞くことは無く、あえて音柱から話題を出す。

「名前の事気にならねぇのか」

炎柱はどこか寂しそうに微笑みながら遠くを見る。

「名前は、音柱のところにいるのだろう。子も無事に生まれただろうか。俺の代わりに幸せにしてやってくれるか音柱。」

炎柱の表情を見て害はないと判断した音柱 宇髄天元は本心を言い放つ。


「言われなくても、俺は名前を愛してる。必ず幸せにしてやるから安心しろ」

音柱 宇髄天元は名前への想いをしっかりと伝え炎柱は安心した笑みを見せていたのだった。

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