名前が鬼化して数週間後。

鬼殺隊本部にて柱合会議が行われていた。

その中でも当主と柱の間には名前の任務先にいた隊員が顔を真っ青にして震えている姿があった。

「名前が任務に行ってから消息を絶っているようだね。その現場の状況をき貸せてくれるかい?」

当主、産屋敷耀哉が隊員に向かって声をかけると隊員は緊張のあまりビクッと身体を跳ねさせた。

「そそそ、その、苗字さんは俺を庇ってそのまま、そのまま、腕を噛みちぎられて…!!」

「腕を噛みちぎられた」という言葉にざわつく柱達。
恋柱の甘露寺蜜璃は「そんな…!」とショックを受け口に手を当てながら隣にいる炎柱の煉獄杏寿郎を見る。

だが彼1人だけは表情を変えずに真剣な眼差しで隊員を見ていた。

「名前は、腕を失ったんだね?それからは覚えているかな?」

「は、はは、はいっ。それからは…俺は何も出来ずに…う、ううっ…」

隊員は何も出来ずに名前を置いて逃げてしまった事を思い出しては悔し涙を流した。

「目の前で腕千切られてんのに逃げるとはある意味派手なヤツだな」

音柱の宇髄天元がため息混じりに言葉を発する。
また興味のなさそうな風柱の不死川実弥からもため息をつく音が聞こえた。

産屋敷耀哉が他に得られる情報がないと判断しては隊員を柱合会議の席から外すように指示をすれば、隠が隊員を連れ出していく。

「名前私の大事な子どもの1人。生死も不明で消息を絶った今彼女はどうしているだろう。何か小さなことでも情報があったら共有するように。」

産屋敷耀哉がそういうと柱達は全員返事を交わし、ひとつの話題が終了とした。


柱合会議後、甘露寺蜜璃は帰ろうとする杏寿郎の元へと駆け足でやってくる。

「煉獄さん…っ!」

「甘露寺か!どうしたんだ!」

いつもと変わらず活気に溢れた姿を見せた杏寿郎の姿に少し戸惑いを見せる甘露寺。

「え、えっとそのぉ…名前ちゃんのことなんですけど…私も探して何か分かればすぐにお伝えしますし、だからその…」

「ありがとう。甘露寺。」

「煉獄さん…」


杏寿郎は微笑みを見せるもどこか寂しそうな表情を浮かべ、甘露寺にも気持ちが移ってしまう。

愛する人が消息不明なんてどんなに辛いだろうと甘露寺は想像しては胸が苦しくなる。

「俺が一生守ると約束したばかりでこんなことになってしまった。全て俺の責任だ。」

「?!…煉獄さん、それって…!」

「あぁ、訳あって届けは出せていないがな。」

甘露寺はすぐに察して「キャー!」と声を出しかけたがすぐにこの状況じゃまずいと自分の手で口を塞いだ。


「でもそれじゃあなおさら…」

「うむ。だがそれ以前に俺は名前を大事にしてやれなかった。その罰が今この時なのだろう。」

その言葉を聞いてから甘露寺は返す言葉がわからず、黙り込んでしまう。
何かあった、とだけ察して杏寿郎の去っていく背中を見守っていた。
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とっぷ