翌朝。

いつも通りに朝食をとる煉獄家。
朝食を終え、千寿郎が片付けを行っている間に名前は杏寿郎に声をかけた。

「し、師範…」

「どうかしたか!」

「あ、あの大変お恥ずかしい話なのですが…」

名前は改めて杏寿郎の前で正座をして頭を下げた。

「さ、昨夜の継子としての話ですが…」

「うむ!なかったことにしてやろう!」

この人は心でも読めるのかと心の中でツッコミを入れながらも照れながら名前は顔を上げた。

「それに師範と言っているようじゃあまだまだ気持ちは継子のままのようだ!!」

「あっ」

「本当だ…」と師範と呼んでしまったことにさらに照れが出てしまう名前。

師匠としても夫婦としての煉獄杏寿郎との関係を切ろうとしていた名前は、そうしなくても良いと昨夜気付かされては恐れ多くも継子をやめる話を取り消したいとお願いしたところであった。

「これからもよろしくお願い致します」

「うむ、一生を共にしよう!」

「は、はいっ…!」

その後名前が任務先に向かうまで、「任務を終わらせる時間が早くなってきているな!」と杏寿郎から言われ名前はたまたまだと謙遜をしたりと二人の時間を短いながらも過ごした。


今回の任務は調査を含め名前は午前中に煉獄家を出発することになっていた。

身支度を整え、任務へ向かう前に慎寿郎、千寿郎、最後に玄関まで見送る杏寿郎に挨拶を交わす。

「では、行ってきます!」

「うむ!気合を入れて行け!」

「はい!!」

杏寿郎に圧倒されることなく、元気よく返事をして笑顔で煉獄家を後にする名前。

杏寿郎は去っていく名前を姿が見えなるなるまで見守ろうとすると視線に気づいたか名前はたまに杏寿郎の方を振り返っては手を振っていた。


完全に名前の姿が見えなくなると杏寿郎は急に寂しさに襲われ胸が苦しくなる。

「(俺たちは強い絆で結ばれている。大丈夫だ。もう離れていくことはない。)」

軽く深呼吸をして理性を保ち、杏寿郎も別の任務の為に家の中へと戻り支度を始めることとなった。



一方名前は、任務先はとある山の奥ではあったもののそこで作業をしているという街の人が消息を絶っているという事でまず街で事情聴取を行うこととなった。

街で情報を得た後、日が沈む前に山の奥へと入り地形をある程度理解してから鬼を見つけ出し首を取ろうと考えていた。

名前は物腰が柔らかく、女性という立場であることから、「鬼」という言葉を出さなければある程度の人達は優しく接して答えてくれていた。


数十人に聴取を行うとわかったこととしては、被害者はいるものの多くではないということ。

「(あまり人を喰ってない…?それか喰う人間にこだわりのある上弦とか…?)」


上弦の鬼には職にこだわりがある者がいると噂に聞いていた名前はもしそうであったら…と身震いをした。
[NEXT]

とっぷ