名前と杏寿郎は2人で過ごす時間をほとんど無いに等しい状況が続いたまま数ヶ月が経過。

名前と杏寿郎が任務を終えて夜互いに家にいる時間もあったが、特に話すこともなく日課となっていた杏寿郎の晩酌の時間も2人で過ごすことは気付けば無くなっていた。

あまりにも時間がなく互いに気持ちはどこかにあるもののどう接したら良いか、ましてや以前はどのように接していたか感覚として思い出すことが出来ずに行動にして表すことが出来ずにいた。


名前は今日に指令が出された任務に向かっていたが、標的の鬼はかなり弱く日が落ちて間もなく任務を完了させ煉獄家へと戻っていた。


食卓へと向かうと千寿郎と杏寿郎の姿が目に映った。
千寿郎は「おかえりなさい」と名前に微笑みを見せてすぐに食事の準備をし始める。


「ただいま戻りました」

「うむ」


名前は杏寿郎と少し距離をあけた位置で隣に座り挨拶を交わすも互いに素っ気ない態度で終わってしまう。

しばらくすると千寿郎は食事を出してくれ、名前は「ありがとうございます」と美味しそうな食事を見て笑みを見せた。


それから夜も更け、名前は自室で睡眠をとるための支度を行っていた。

化粧水を肌につけ、髪を櫛でとかし布団の中へと入る。

いつもなら1呼吸置いて目をつぶれば夢の世界に入れたものの、今日はなかなか寝付けない。

それは師匠であり夫の杏寿郎の事が頭によぎったからであった。

現状は炎柱の任務のお共をすることもなく、1人で任務を任せられる程になってしまった。

正直、冷静に考えてみては名前は今にでも柱になれる程の力を兼ね備えたといっても過言ではないだろうか、自立すべきではないかと考えに至っていた。


「(継子をやめればもう師範に迷惑をかけずに済む…)」


自身がいることによって杏寿郎を精神的に疲れさせてはならないと、布団の中でそう解決に至ればすぐさま布団から飛び起きる。

自室を出て杏寿郎の部屋へと向かえばそこには杏寿郎の姿はなく、台所へと向かうと酒を片付けている杏寿郎の姿があった。


名前が来たという物音に気付き杏寿郎は名前の方へ振り返ると少し驚いたような表情を見せる。


「師範、少しお話する時間を頂けませんか」


名前はどこか寂しそうにする表情を浮かべながらも目は真っ直ぐに真剣そのものであった。


杏寿郎は片付けが終わると食卓にある机の横へと腰をかけ、その前に名前も腰を下ろしては正座をする。

2人は互いに目を見合った。
こうするのもどれくらいぶりだろうかと思いながら名前はしっかりと杏寿郎の目を見て1呼吸置く。


「師範、私は炎柱の継子を辞めさせて頂きたいと思いお話をさせて頂きました。」


杏寿郎は目をそらすことなく、しっかりと名前の目を見て話を聞く。


「短い間でしたが、本当にありがとうございました。明日の任務と同時にこの家を出ます。」


名前はゆっくりと目を閉じ、その場で頭を下げた。

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とっぷ