設定 善逸も夢主も社会人で恋仲。土曜日。お互い一人暮らしで夢主の元彼は思いやりがなく体調を崩しても一切助けてくれなかったことがある。


あるアパートの一室。
毛布に包まりながらトイレに顔を突っ込み嘔吐する名前。

朝目が覚めてから寒気と吐き気に襲われ、フラフラもしながら毛布を持ちトイレへ駆け込んで数時間が経過した。

あまりの吐き気にトイレから離れることが出来ずにいた。

家族を呼ぼうにも遠くにいるため呼び出せない。
また、彼氏の善逸に連絡を取ろうかとも思ったが前の彼氏は名前が体調を悪くしたところで何も気にかけないどころか浮気までしていたトラウマがあった。

交際する前、善逸もまた可愛らしい女性を見れば興味を持つ姿を何度も目にしていた為悪いことばかりを考えてしまう名前。

体調も悪く誰も助けてくれないこの状況に涙しながら吐き気に襲われ続けた。


「名前…?」


吐き気に襲われながら便器に顔を向けたまま声に耳を傾ける名前。
その声は紛れなく彼氏である善逸。


「なっ…!大丈夫?!どうしたの?具合悪いの?」


吐き気が強く返事が出来ない名前。
返事どころか自分を見ることさえしない名前でさえ優しい目で見ては状況を察して背中をさする善逸。

「無理して喋らなくていいから、ごめんね、連絡ぜんぜんつかないから心配して勝手に来たんだ。」

善逸は背中をさすりながらも、自身の状況を説明する。

名前はせめでもの「ごめん」と伝えたくて吐き気が少し落ち着いたタイミングを見つけてゆっくりと顔を上げると涙が溢れかえり、あまりの具合の悪さに声は出せなかった。

「泣くほど辛かったんだな、ごめんね、俺もっと早く気づいてあげれば…」

「善逸は…悪くない…ありがとね…」

落ち込み少し悲しそうな表情をする善逸を見て力を振り絞り言葉を発した。
善逸は慌てて表情を変えては「大丈夫?」「出来ることある?」と名前に優しく声をかける。

しばらくすると名前は吐き気がありつつも、吐くものがないと判断して善逸に捕まりながらベッドへと向かい横たわった。

すぐに善逸は部屋にある棚から体温計を持ち出し、名前の身体を動かし熱を測る。

数十秒後、体温計が音を鳴らし体温を確認すると「38.4℃」と表示され名前に心配をさせないように驚きをなんとか隠しながら体温計をベッドの近くへと置いた。

「とりあえず、今日は病院もやってないし薬でも買ってくるよ。1人でも大丈夫?」

顔色を悪くさせた名前は起きている様子だが、目はつぶっており、吐き気と戦っているのか返事が出来ないようであった。

「あ、俺質問するから「はい」だったら1回、「いいえ」だったら2回俺の手を指でポンポンってしてくれる?」

喋れないと察した善逸はすぐさま微笑みを見せながら提案をしては名前の手の下に自身の手を敷くように置くと、名前は人差し指で1回軽く叩き「はい」を表す。
これなら意思疎通できると安心した善逸は笑顔を見せた。

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とっぷ