「本日は全身訓練を行う!!」

晴天の日、煉獄家の庭では炎柱の煉獄杏寿郎とその継子の苗字名前が互いに向き合って立っていた。

稽古をつけてもらうために庭に出たものの、苗字は聞いたことない内容を聞かされポカンとしてしまう。

「あ、あの…」

「なんだ!!」

「全身訓練とはなんでしょうか…その、素振りとか手合わせではないのですか?」

苗字は煉獄に問うと、煉獄はキラキラと目を輝かせてた。

「胡蝶から普段行っている訓練を聞いてな!その中でも全身訓練という、つまり鬼ごっこが良さそうだと思い立ったところだ!!」

「鬼ごっこ…?」

「1人は鬼となり、相手に触れることが出来れば勝利。そう難しいことではない!まず苗字が鬼となれ!」

そんな急にと慌てる苗字の言葉を聞く前に、既に目の前に立ちはだかっては煉獄の周りの空気が変わるのを感じる。

冗談抜きに本当に継子を育てるための鍛錬だと気付き、息を飲む苗字。

数歩先にいる煉獄をじっと数秒観察してはここだと見極めては足を前へと踏み出した。

苗字は女性ながらの柔軟さを活かし速度を生み出し煉獄に手を伸ばすも気付けば煉獄の姿はなく掠ることも無かった。

周りを見渡しても煉獄の姿はなく、キョロキョロとその場で目や身体を動かすも姿が捉えられない。

「君が鬼であれば既に首を切られていたな」

今まで姿もなく気配もなかった煉獄が自身の後ろに立ち、抜刀しては苗字の首元へと日輪刀の錬が触れていた。

首を切られることはないとわかっていても、日輪刀が触れている事に息が出来なくなるほど緊張が走る。

名前は一息飲むと、気を取り直し瞬時に後ろへと振り返り手を伸ばすものの、また煉獄は姿を消す。

それから2人は動きを止めることなく、名前は煉獄を追いかけ続けたもすぐに目の前から姿を消しては逃げ続けた。

一部始終を見ていた千寿郎曰く、2人の動きは目で追うことが出来なかったという。


全身訓練が始まり軽く1時間は経過しただろうか、というところで煉獄は名前の後ろに回る。

容赦なく煉獄は名前の方へと手を伸ばすが、慌てて名前はその場にしゃがみ回避をしては体勢を直し煉獄との距離をとった。

1時間程気を緩ませることなく師範に触れることに精一杯であった苗字は息を切らす。

その様子を見てもなお全身訓練が始まる前と変わらずに涼しい顔をしてその場を立つ姿を見ては力はともかく速さにも勝てない自身に苛立ちを感じ始めていた。

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とっぷ