無限列車から数年前。


「私、杏寿郎のことが好き。」

「名前…俺も君のことを愛している。俺が20になる頃、俺の嫁になってくれないか。」


「えぇ、私でよければ…私の人生を杏寿郎さんに捧げます。」


2人は名前の家の縁側で並んで座り、微笑み合いながら言葉を交わす。


名前の家は名前自身1人で暮らしている。
それは両親が病死している為だった。また、名前も同じように病にかかっており、身体が弱くあまり外出する体力もない。


杏寿郎と名前は親の関係で幼馴染という関係をもっては、寂しい思いをさせない為に杏寿郎は名前の家に訪ねては、時間さえあれば2人で過ごしていた。


それは時に愛へと発展させ、特別な存在ではあったものの杏寿郎は「立派な柱となり、夫婦になるまで」と約束して名前とは手に触れることで止まっていた。


ある日のこと。


「名前!聞いてくれ!下弦の討伐を終えた!」

「杏寿郎さん…!おめでとう、これで柱になれるのね。そしてなによりも帰ってきてくれてありがとう。」

「うむ!」


杏寿郎は下弦との戦いを終えて松葉杖をつきながらも、名前の家に行っては駆け足で名前の元へ向かい報告をしていた。


名前は杏寿郎の身体を労るも「大丈夫だ!」と笑っていた。

それよりも杏寿郎は病に侵された名前の方が心配で、もし両親のように突然死してしまうのではないかと恐れていた。


「(俺は柱となって名前を…)」


愛の言葉を交わして約束したこと。
柱となって名前に婚姻を申し出したい気持ちでいっぱいになっていた杏寿郎は少しそわそわしている。


そんな中「食べられる?」と名前は心配しながらも夕飯の支度をしていた。

夕飯の中にはさつまいもの味噌汁もあり、それに気付いた杏寿郎は表情を明るくさせ元気よく返事をする。

名前は杏寿郎の怪我を気にしながらも、2人は仲良く食卓を囲った。


「下弦って強かった?」と名前は聞くと杏寿郎は詳しくわかりやすく説明を行う。
その中でも一緒についていた甘露寺の名前が出ると名前は少しむっとした表情を見せる。

「名前?」

「あっ、ごめんなさい。甘露寺さんいたんだなぁと思ったらつい…」

「甘露寺がどうかしたのか?」


杏寿郎が笑みを浮かべながらもあまりに不思議そうに名前を見ていたため名前は少しため息をつく。


「だって、あんなに可愛いらしい方だもの。そして戦えるでしょう?それに比べて私はと思うと、少し嫉妬しているのかも…」

「嫉妬…?俺に嫉妬してくれているのか…?」

持っていた箸を起き、少し顔を俯いては横髪で隠れ見えなくなった名前の髪を耳にかけて顔を覗き込んだ。


「愛しているのは君だけだ。俺を信じてくれ。」


名前は杏寿郎に目線を移動させこくんと頷く。


「だが嫉妬してくれるとは嬉しいものだな!」と杏寿郎は笑い夕飯に手をつけた。

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