「…………おぉ……」
思わずそんな声が漏れた。
その経緯を話すと10分弱ほど前に遡る。
私はここ、四天宝寺中の男子テニス部のマネージャーをやっている。
今日も平和に部活の時間を迎えようとしたところで部員たちは気づいた、「財前いなくねぇ?」。
そしてわーほんまやーあいつどこ行っとんねーんみたいにがやがやなっている中「しゃーないわぁ」とでも言うようにため息をついた白石が私にこう言った、「悪いけどなまえ、財前連れてきてくれへん?」お前ほんとに悪いと思ってんのかコルァ。
「えー私タオルとか用意しなきゃなんな「ええで。今回は見逃したる」…連れてくならそこのスピードスター(笑)の方が早いじゃん」「おっなまえわかっとるやん!任せとき、もちろん浪速のスピードスターの方が速「財前が素直に謙也の言うこと聞くわけないやろ?逆に時間かかるわ」「白石ィイイイ」「それもそっか。いってきます」「なまえなんでそこで納得するん!?」
というわけで私は財前を探す羽目になった。
とりあえず財前のクラスの教室まで行って扉を開けてみると机の上で腕を枕に寝ている黒色があった。
拍子抜けするほどあっさり財前が見つかったのである。
「………寝てる?」
近づくと財前は寝ているのがわかった。
そして私は思わず冒頭の声をあげたのである。
「うわ……」
なんていうか、普段は憎まれ口ばっかの可愛げのない後輩だけど、寝顔はすっごく可愛くて、やっぱり黙ってればイケメンなんだなーって思った。
ほんと寝顔って無防備だな。
…じゃなくて、早く戻らないと仕事が滞るんだった。
「ざいぜーんおきてー」
我ながらやる気のない声で財前の肩を揺する。
数秒で財前が「んー…」と短く唸った。
「あれ……先輩?」
「おはよー財前。もう部活始まってるよ。」
「ああ……すんません」
そう言って財前はペンケースやらノートやらをバッグに纏め始めた。何時間目から寝てたんだ。
そんなことをぼんやり考えていたらふいに「先輩、」と呼ばれた。
「………っ!?」
私が「何?」と返す前に私の視界には財前のドアップ。
………え?
「なまえ先輩が無防備すぎるのが悪いんすわ」
じゃあお先に、と教室を出た財前を見送る私は15年間生きてきた中でいちばん赤い顔をしてるんじゃないかと思う。
無防備なのはどっち?
(財前来たんはええけどなまえ帰ってくんの遅すぎやで)
(子どもが生まれそうな妊婦さんを助けてた。)
(他の人のネタを使わない!!)