立海テニス部の朝は早い。
朝練なんて正直ダルいし眠いぜよ

なんて真田の前で言ったら鉄拳制裁を喰らうだろうが。


「(でもダルい…サボろ…)」


フラリと部室を抜けようとしたら、入り口にはにやけ顔を隠そうともしないで仁王立ちのあいつが。
あれは確実に何か企んどる顔じゃ……


「なまえ、どきんしゃい」

『ここを通りたいならアタシを倒してからにしな!』

「おふさげに付き合うとる暇はなか」


早くせんと幸村に見つかりかねん。


「っと仁王はどこに行くのかな?」

「…ほーらなまえのせいで見つかった」

『サボりはよくないよ仁王クン』


「眠いダルい疲れたー」と駄々をこねると、なまえは我が意を得たりとばかりに『ふふん』と鼻を鳴らした。


『そーんな皆さんの為にスペシャルキュートな超絶可愛い気の利くマネージャーのなまえちゃんから、差し入れだよーん!いやあ、さっすがわたし!ほんと気が利k…「「差し入れ!?」」…ぎゃぼっ!』


'差し入れ'に反応した丸井と赤也に押されて、投げ飛ばされるなまえは相変わらずバカ。

でもそんなバカに腹が立つのは差し入れを全員分作ってきたからじゃろうか



「ていうか…差し入れにハチミツレモンって安直過ぎじゃろ…」


さっそく丸井とかがバクバク頬張っとるのは、差し入れの定番のソレで。

まあ栄養価的には間違いじゃないからトレーニングを中断して真田達も寄ってきた。
それがまたなんとも面白くないと感じる。


『ほら仁王も食べないの〜?』

「…おれハチミツレモン嫌いじゃし」

『そう言うと思ってね、仁王には別に作ってきたよ』


なんてそっぽを向いてやれば思わぬ返答が返ってきて。慌ててなまえを振り返ったら、ジャンジャカジャーン!と自ら効果音を言いながらタッパーを取り出した。

つまり、おれの為だけに作ってくれた特別な品。

その事実にとたんに上機嫌になったおれはやはり単純で。
にやける顔を抑えてタッパーを受け取る。


と。



「なんじゃこの黒い物体!!」


思わず小さな悲鳴がでた。


『え、コーヒーレモンだけど…?』

「え、なに知ってて当然のような顔してるんじゃ…?」


コーヒーレモンなんて聞いたことなか!
それをさも当然のような顔をして差し出してくるなまえの背後には、にやにや笑う幸村。

絶対こいつの入れ知恵じゃな。


「……………」

『あのね仁王っていっつもだるそうな眠そうな顔してんじゃん?』

「…そうかのぅ?」

『うん!だからねコレをと思って!カフェインは眠気覚ましにいいんだって。シャキッとするよ!』

「で、コーヒーレモン?」


目の前のはどう見ても食欲をそそられない、寧ろ減退効果のありそうな物体。
それをさも当然のような顔をして差し出してくるなまえに負けて恐る恐る口に含む。



『カフェインはコーヒーに多く含まれてるんだって。これ幸村情報ね☆』


というなまえの言葉と、おれが咳き込むのが同時だった。


「………すっぱ!!」

「まあ、そうだろうな。」

「参謀…!」

「コーヒーはレモンと反応するとより酸っぱくなる」

「分かってるなら早くいってくれ…」


後ろに見え隠れしている爆笑する幸村に文句を言えるはずもなく。
きょとんと、可愛い笑顔をのぞかせるなまえに文句を言う気にもならず?



『どう?美味しかった?』

「ウマカッタゼヨー」

『棒読みかっ!!』




こんな変人でも好きになったおれの負け。


君の笑顔は眠気覚まし
(じゃあ次はコーヒーで栄養ドリンク作ってくるね!)(気持ちだけで充分ぜよー…)








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