今日は野郎共で飲み明かすでー!と急に召集された白石主催の飲み会。

野郎共だけって何やねん。なんか白石ヤケになってないか?
そう思いはしたものの、まあ特に予定はないかと思い参加を決めた。
というか半ば強制的に決まっていた。


現在白石のマンションで、いつものメンバーと飲み明かしている。

財前のやつまでいるのは意外やったけど、やつは自嘲気味に「こんな日にひとりはもっと嫌なんすわ」とかなんとか言っていた。
なんや財前のやつ誕生日とかやったか…?


「くっそー!街中リア充で溢れかえりやがって!通行の邪魔なんじゃコンチクショー!なあ謙也!ってお前もリア充やがなぁああああああ!」


うっわ出た、ユウジの絡み酒。
そうや小春は今日は都合が悪うて来れんのやったっけ。
そりゃ荒れるわなあ。

白石は白石で部屋の隅でチビチビ晩酌を続けてるし、財前はジャブジャブと浴びるように飲んでる。


「ほんまやで。リア充なんかリア充なんか……。謙也ぁああああああ!」

「だいたい謙也さんは何やってんすか。今日という日に。…まあそれで別れちまったらいいんすけど」


…話がこっちにスライドされた。

おれとなまえが付き合うことになった時は祝福してくれたくせに、なんやみんな訳わからんわ。
「お前らそんな彼女欲しいんか?」というと怒涛の勢いで、非難の声がかえってきた。


「お前ってやつは!今日という日になんちゅうことを!!」

「まじないっすわーほんまないっすわー。mjksですわ謙也さん」

「今日はなあ!街中がリア充で溢れかえる聖なる日なんやで!!」


おったんかいな副部長!!

ていうか。
聖なる日ってつまり…


「アホかお前はぁああああ!今日は小春と過ごすはずやった恋人達のクリスマスイヴなんじゃあどアホがあああ!!」


イマイチ呂律の回っていないユウジの言葉で我に返った。

今日がクリスマスイヴってそれ…


「ま、まじ…で…?」



*



「なまえー諦めて飲みなよー」

「いい、いらん」


友人達の誘惑をもキッパリと断り、わたしは携帯との睨めっこを再開させた。

電話、ゼロ。
メール、ゼロ。

そうだ、きっとこのケータイが壊れてるんだ。


「なまえもっと飲まんと会費の元とれへんでー」

「クリスマスデートの約束ほっぽりだして連絡も寄越さん男なんか捨てちまえー」

「うちらがええ男紹介したるからあ」


女子会も中盤にはいり、みんないい感じに酔いが回ってきている。
彼氏から連絡ないから女子会に混ぜて、なんて恥を忍んで友人達に頼んだ割には、わたしはまだ諦めてなかったらしい。

酒類を一滴も含まず、ひたすら彼氏である謙也からの連絡を待っている。


「おらおら飲め飲め」

「ちょっ。飲んだら電話かかってきた時になに言うか分からへんやん」

「いいやんアホバカこのクソヤロウくらい言うたって」

「違う。アホバカこのクソヤロウって言いたいから飲まへんの」


飲んでしまったら謙也の声を聞いた途端に理性なんか飛んでって、怒れなくなるに決まってる。


「なー誰かわたしのケータイに電話かけてや」

「ちゃうでなまえ。悪いんはなまえのケータイじゃなくて彼氏の方!」

「いいからかけてみて」


友人はため息をつきながらケータイにコールをかけてくれた。

〜〜〜♪♪
するといつもの音楽を軽快に奏でるケータイ。

深いため息がこぼれたのは言うまでもなく。


「もういいー!わたしも飲む!」

「おっしなまえさんアルコール入りまーす!」

「イケイケー!いぇーい!」


女子会のノリに付き合って浴びるようにアルコールを含んだ。
言っとくけど、わたしは酒には滅法強い。余裕の笑みを浮かべて3人を抜いたとき――、


〜〜〜♪♪

今度はロマンチックにクリスマスソングが響いた。


「誰か電話ちゃうー?いいねえ彼氏から連絡かあ?若いなあ……ほんまリア充とか逝ってまえ!!」

「ちょっ、なまえヤケ起こさんといて!」

「ていうかウチのちゃうでー」


ウチじゃない、あたしじゃない、私じゃない。
そんな声が続いた。潰れた女の子を除いて、あと残っているのは…


「わ、わたし…?」


そうだ謙也だけ、着メロ変えたんだった。恋人達のクリスマスソング。

ブルブルと振動を続けて鳴り響くそのケータイにわたしは飛びついた。


『なまえ!ほんっまにごめん!!』


―――電話の向こうで愛しいあいつの声がした。


「――もしもし?」
「――うんうん。平気やで大丈夫」
「――あ、ごめん今女子会いてて。すぐ抜けるな」


トントン。
肩を叩かれて振り返ると、『アホバカこのクソヤロウ、言え』口パクで、友人達がにやにやしながら伝えてきた。

ああもううるさいな。


「――もしもし謙也?




大好きやで愛してる。




それは理性とともに。
(ため息なんてそんなのは)(どこかへ飛んで消え去った)











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