「なまえ、聞いてくれ。実は」

「ん?」

「赤ん坊ができたさー」

「ぐはぁっ!」


彼のその言葉に、飲んでいたココアを吐き出しそうになった。


「ッゴホッ…ゲホゲホッ!!」

「あいひゃー…大丈夫か、なまえ?」


何とかテーブルを茶色い惨事には浸さず、むせるだけに留めたけど。
それでも受けた衝撃は大きいまま。


「だっ…大丈夫じゃないさー!やー、誰の子供産むつもりなんばぁ!?」

「あい?」


私は、向かいに座ってきょとんとしている裕次郎にそう叫んだ。
そのあまりにも無防備な"きょとん"が可愛くて一瞬キュンときた…のは今は関係なくて。

問題は、そんな愛らしい彼が唐突に放った爆弾発言の内容。


「だから、赤ん坊って…」


まさかそれ…裕次郎に宿ったって意味?と付け加えたら。


「ぶっ!!」


今度は彼が、飲んでいたコーラを噴き出しかかり。


「はははっ、んな訳ないだろ!やっぱなまえ、わんよりふらーだな!ははははは!!」

「なっ…」


そう言って私をひとしきり笑うと、


「妊娠したのはわんじゃなくてわんの従姉さー!」


と告げた。

真っ先にそれを言え!
神妙な顔でいきなり事実だけ述べられたらそりゃびっくりするわ!


「ならそう言わんと分からんやっし!」

「はは、わりいわりい!けど普通はある程度予想つくはずだばぁよ」

「……」


まぁ確かに。
今の私は気が気じゃないだけあって、少し安易すぎる反応をしてしまった。
…"裕次郎が"、妊娠するだなんて。


「なんか来週出産予定らしくてな。わんも昨日おばあから電話で聞いてビビったんどー」

「じ…じゅんになー!?"ちばりよ"って伝えて!!」

「おう!」


白い歯を見せてにっと笑う彼。

…そのタイミングで、ついに尋ねてみたくなった。
もう少し後に報告しようかと思っていたけど、もう待てない。


「…裕次郎」

「あい、ぬーが?なまえ」

「やーは赤ん坊、しちゅん?」


すると。


「んなもん、好きに決まってるやっし!従姉のわらばーどころか、もしなまえとの赤ん坊なら…わん将来絶対うやふらーさー!!」


君は日に焼けた綺麗な顔を少しだけ赤くして、私に微笑んだ。


「……」


将来絶対親バカ、か。
裕次郎らしいなと思った。

…それから、そんな君を。


「裕次郎、今日は何の日?」

「ん?えっとー12月25日…クリスマス、じゃないんどー?」

「そう、その通り。わん、裕次郎にサプライズプレゼントがあるさー」

「おっ!ぬーやが!?」


一刻も早く、この目で見てみたいと思った。


「聞いて?…わん、」

「ん?」


あなたのこどもが、できました
(まっ、マジでか!?や……やったああああああ!!)
(にふぇーでーびる…裕次郎!)









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