「あーここにもなまえおるー!」


と騒ぐうちの可愛い後輩の視線の先には、思い出のアルバム。
「みんなの小さい頃のが見たいんやー!」とだだをこねられ、根負けしたうちが持ってきた代物だ。


『そりゃまあ、うちのアルバムやしなあ』

「あっこっち白石か!?あー!謙也ちっさ!謙也ちっさ!」

『なんで2回言うたん…』


さっきからうちやレギュラーのみんなを見つけては大はしゃぎな金ちゃん。

そんなけ喜んでもらったら持ってきた甲斐もあるってモンや。



「あ、なまえこれ何や!?」


とニコニコ顔の金ちゃんが指差すのは、ええとそう、去年のお笑いグランプリの時の写真。

謙也と光のコンビで出たんやけど、この時の腐女子狙いのネタが受けて、ベストカップル賞にもなぜかランクインしたんというやつ。

あの時の光の死にたそうな顔は見ものやったなー。
あの頃からだ。今まで以上に光の謙也への当たりがそれまで以上に強くなったのは。


「あ、こっちは学園祭の写真やん!このなまえわいより小さいんちゃうー!?」

『そりゃ一年の時の写真やもん。今は金ちゃんより大きいで』


というと一瞬険しくなった金ちゃんの表情。
しまった、金ちゃんに身長ネタは禁句だったか…?

そしたら金ちゃんが拗ねた表情で「なまえは背の高い男が好きなんか?」なんて聞いてくるから思わず吹き出してしまった


『そりゃまあ低いか高いかやったら高い方が好きやけど、』


目に見えて膨れた金ちゃんの頭に手をやって、肌触りのよいきれいな髪をワシャワシャと撫で回した。


『けど、そのうち金ちゃんにも抜かされるやろうけどなー』


と言うと金ちゃんはパッと表情を明るくした。


「ほんまか!?ならわい、これから毎日牛乳飲むわ!」

『そんなんされたらうちすぐ抜かされるわー』

「おん!すぐ抜かしたる!」


上機嫌な金ちゃんの視線は再びアルバムに戻った

これは何やあれは何や、と聞いてくる金ちゃんに答えていると、またどんどん金ちゃんの口元がまた、への字に歪んでくるのが分かった。


「…これ、なん?」

『へ?あー……』


金ちゃんが指差す先には、これまた去年の学園祭でなされたもようし物の悪ふざけ企画、『ベストカップルは誰で賞!』の時の写真だった。
謙也と光までもが入賞してしまったという曰く付きの。

そして人数の関係でどうしてもと頼み込まれうちと白石のペアで出場し、何故か3位までに食い込むという快挙を成し遂げたのだ。
もちろん1位はユウジと小春のカップルだったけど。


「……ふーん。なまえは白石と付き合ってないけど、べすとかっぷる賞やったん?」

『あーまあそれ悪ふざけやしな』

「なんやなまえの写真にはよう白石映っとるよなー」


「そうかあ?」なんて適当に返事したけど、よく見ると、うんまあ確かに多い。

白石とは1、2、3年通して同じクラスで仲が良いし、うちは1年の時からマネージャーをしていたから今や気心知れた戦友のような感じだ。
いや、もう兄妹?


『あーそやなあ…白石とは絡む機会も多いしなあ』

「ふーん。」


あ、れ…?
なんか金ちゃん、めっちゃ機嫌悪くありません?

カバンから取り出した金ちゃんお気に入りの'たこ焼き味'のう●い棒を贈呈すると、いつもなら飛びついてくるのに今回ばかりは苦い顔して受け取った。

それでも受け取るんやけど。


『…金ちゃん美味しい?』

「……ん。」

『どないしたん?』


問いかけるとたこ焼きを詰めたように、プーと膨らむ頬
めちゃくちゃ可愛い…じゃなくて!


「なまえが白石と映ってんの、わい嫌やー…」

『え、』

「白石だけやなくて、謙也も、光も、小春もユウジも、千歳も銀も、みんなみんな嫌や」


なまえはわいと写真撮るんやー!

タダをこね出した金ちゃんは気づいてないだろうけど、
どうしよう……


めちゃくちゃ嬉しい。



『…なあ、金ちゃん、』

「なんや?」



ふくれっ面でこっちを振り返った金ちゃんに、うちに出来る最高の笑顔を


―――カシャッ

「あ、」


シャッター音を響かせて、ふくれっ面の金ちゃんと満面の笑みのうち

ツーショットの写真が撮れた


『ほんならな、これからいっぱいいっぱい写真撮ろ!2人の写真をいーっぱい!』

「っおん!!」


輝くばかりの笑顔を見せてくれた君に、もう1度。

カシャカシャッと再びシャッター音を響かせた。




こうして残る想い出のかたち。
(わいなまえの笑ってる顔がいちばん好きや!)(ええええ金ちゃんっ)(ストレート過ぎや!)









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