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手を伸ばしたって、わたしにはその手を掴む勇気さえない。それを見抜いた男が呆れた様子でわたしの手を掴むのがいつものことなのだ。

「ほんと、みょうじはカミやんのこと…」
「な、なにも言わないで!」
「ああ」
「……っ」
「…そんな顔しないで欲しいにゃー」

土御門が悲しそうに眉を下げてこちらを見て言った。わたしが上条のことが好きなことを知っている土御門。けど何もできないわたしも知っている土御門。放課後になったって、呼び止めることも声をかけることもできない。だって、拒絶されたらどうしていいか分からなくなるじゃない。土御門には上条はそんなヤツじゃない、と言われた。分かってるけど、けど…、わたしにはそれくらいの勇気もないの。

「みょうじ、」
「うん」
「俺にしとけば、いいんじゃないかにゃー」
「?」
「俺だったらみょうじを悲しませたりしないぜい」
「…ばーか」
「バカでもいい」

土御門の表情を見れば冗談で言っているように見えなくて。ああ、どうしよう、なんてわたしの想いが少し揺らいだ。どっちがバカよ。わたしがバカじゃない。気がつくのが遅すぎるよ。

「土御門さんはいつでもなまえさんのことを思ってるからにゃー?」

気がついたらわたしの心を埋め尽くしてたのは、土御門だった。



110416