「なまえ」
わたしの方に伸ばされた手。簡単にこの手を振り払えたのならどんなに楽なんだろう。
「……バカ」
「俺様に言っているのか？」
「フィアンマのバカ」
「バカはお前だ、俺様の前から居なくなるなとあれほど、」
けど結局、わたしは結局こいつに依存してたってことだ。こいつのことが好きだったってことだ。なんて悔しいんだろう。自分から、フィアンマの言葉を遮るようにして抱きついた。きっと見上げれば驚いた表情をしたフィアンマがいることだろう。見ては、やらないけど。わたしは溢れそうになる涙を堪えてこいつの胸に顔を埋めた。
「…泣くなよ？」
「なかない」
「知っているか、なまえ」
「う、！？」
ガシリと頭をつかまれぐ、と上を向かされる。目に涙を溜めた状態だったわたしの目からは涙がこぼれる。頬を伝う涙がうっとうしい。我慢してたのに、と思いフィアンマを見れば少し困ったような笑みを浮かべていた。なんで、そんな顔してんの、
「俺様の前で泣くのはやめろ」
「……ッ？」
「どうやら俺様はお前の涙に弱いらしいんでな」
赤の髪がわたしの顔にかかるほど近づいてきて、気づけば涙が頬から消えていた。
１１０４０５
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