「海原くんさあ…」 「…はい?」 「たまにだけど、わたしを避け…てるよね?」 「気のせいだと思いますよ。でもどうしてそんなことを…?」 「大人の勘!」 「…あなたらしいですね」 ふ、と小さく笑った海原をなまえはめずらしそうに見つめた。その視線に気付いた海原が怪訝そうな顔でなまえをみる。 「なんですか」 「あー、気にしないで」 「気になるんですが」 「いやあ、そんな風に笑うとこもあるんだなーって。海原くんがめっずらしく可愛いなー、なんて思ったの」 その言葉に海原はそうですか、と返して立ち上がった。海原は可愛い、と言われてすこし恥ずかしい気持ちになっていた。仮にも男なのだが、と。 「ん?どっか行くのー?」 「お茶でも飲もうかと…」 「あ!じゃあわたしのビールもついでに!」 「まったく…、飲みすぎないでくださいよ?」 「はーい!」 ビールをテーブルに置いてから、お茶に口をつける。するとなまえが真剣な目で海原を見つめだした。 「…あの、」 「海原くんの帰ってくる場所は、ここ」 「!」 「ここが海原くんの帰ってくる場所なんだからね。そんで、大人には甘えなさい」 「そんな無茶言わないでくださいよ…」 「えー?じゃあ、ぎゅーしてあげよっか?」 「じゃあ、の意味が分かりませんよ」 「そーかな?あはは」 確かにここが自分の帰る場所なのかもしれない、となまえの笑顔を見た海原は思った。
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