「脱げ」 「へあっ?」 「今すぐそれを脱げ」 「あ、あの、ステイルさ」 「聞こえないのか?僕は今すぐにそれを脱げ、と言っているんだが?」 「いや、聞こえてます!聞こえてます…けど、その、脱げってそんな…」 「……それは土御門にもらった物だと聞いたんだが、」 「は、はい、確かにそうですけど」 「じゃあ脱げ、すぐ脱げ、今ここで!」 今にもイノケンティウス!!と言いだしそうな顔をしたステイルさんがそう言う。土御門に買ってもらったものに、なにか問題があるのだろうか?む、むう、それにしてもここで脱げなんて無茶だ。 「あ、の、脱ぎ…脱ぎますから一旦部屋から出てもらっても…」 「そうしなくてはいけない理由でもあるのかい?」
「いや、み、見られるのは少し…」 「ならこうしている。早く脱げ」 わたしに背をむけるステイルさん。い、いや、そうしてくれるなら部屋から出ていってくれてもいいのでは?と思ったが、なにやらイライラした様子のステイルさんは少し冷静さを失っているように見えた。 …………―、そして脱いでから気付く。着替え、隣の部屋にしかないや。 「振り返らずにそのまま聞いてくださいね、ステイルさん」 「…ああ。どうかしたのかい?」 「脱いだはいいんですが、わたし着る服が隣の部屋にしかないんです」 「わかった」 「あの、それで少し目を…むあ?!」 わたしが言葉を発するより先にステイルさんが上に着ているものを脱いで、こちら側をむいた。そして、それをわたしに羽織らせ、眉間にしわを寄せながら、無理に微笑んでみせたステイルさん。 「へ?」 「少し、待っていてくれないか?」 「は、い…」 小さくうなずく。困ったような表情で言われたら、うなずくほか道はないような気がする。部屋を出るまえにここから動かないように、いいね?と言いステイルさんは行ってしまった。
よく分からないが、隣の部屋にわたしの服を取りに行った、というわけではないようだ。む、むう…服…取りに行こうかな…。いやけど動かないようにって言われたし、なあ。……待つか。
十数分後。 「あ、ありがとうございます、ステイルさん」 「こんなものですまない。気にいらなかったら言ってほしい、すぐにでも別の…」 「いえ!すごく嬉しいです、その、可愛いですし」 「…そうかい?なら、いいんだけどね」 少し機嫌の良さそうな笑みを浮かべたステイルさん。まさか、ステイルさんがわたしに服を買ってきてくれるとは。嬉しい。…でも、いきなり脱げだの、服を買ってきてくれるだの、ステイルさん…どうしちゃったんだろう。
110319 :嫉妬ステイルさん
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