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・ちょっぴり闇条さん



「最近の上条、なんか変…」
「…俺もそう思うにゃー」
「せやな、俺もそう思てたで」
「おー、奇遇だねえ」

いつも上条と一緒にいるこの二人でさえ感じていたことらしいが、最近の上条はどこか変だ。なんていうか、授業中は授業そっちのけで紙に何かを書き殴っているし、隣の席のわたしをやたら無言で見つめてくるし、土御門と青髪への扱いに愛がないというかなんというかすごく雑。とにかく、最近の上条は上条当麻らしくない上条なのだ。

「そのせいで、最近のわたしも変だ…」
「どういうことかにゃー?」
「いや、ほら。たぶん知らずのうちにだけど、上条を…避けてるって、いうか…」
「…そういえば、ここ最近ずっとこの三人で帰ってるやん」

青髪の言葉に三人同時に固まった。二人は今の上条のことをどんな風に思い考えていたのかは分からないけど、わたしは今の上条のことを少し怖いと思っていたのが本当の気持ちだ。いつもの上条らしからぬ行動から彼のことを避けている部分は少なからずあった。あー、原因はもしかしてこれなのかも。上条ってば、いつも仲良くてすぐ寄ってくるくせに、急に寄ってこなくなって不機嫌になってたり。よし、と意気込めば…どうやら二人も考えていることは同じ、というような顔をしていた。

「上条ー、一緒に帰ろー!」
「どうわっ!い、いきなり何するんですかなまえさん!痛いじゃないですかっ」
「あはー、ごめんごめん」
「かーみやん、早く準備するにゃー」
「早う準備せえへんと置いていくでー?」
「はいはい分かりましたよ!」

次の日の放課後、さっそくわたしたちは上条と一緒にかえろう!大作戦を決行した。意外とすんなりうまくいった。分かりましたよ、と言って呆れた顔をする上条はいつもの上条当麻のように、見えた。

「ほな、俺はここやから」
「俺も今日は行くところがあるからここまでだにゃー」
「おう、また明日な」
「また明日ー」

そう言って分かれて、彼らに背をむけ歩き出した瞬間。なんとなく、その場の空気が変わったような気がした。なんか、重い?暗い?冷たい?よく分からない。なんで、空気が変わったような気がしたのかさえ、謎である。気のせいかな…と上条の方を見ると口元は綺麗な弧を描き、目は不自然なくらい輝いていた。一見、すごく機嫌の良さそうなひと、なのだがわたしには恐怖しか感じられなかった。これは、いつもの上条じゃ、ない。

「なまえ」
「! は、い?」
「もっとこっち寄れって」
「へ?…う、おおっ。か、上条?」

突然名前を呼ばれたことに思わず声が裏返る。上条の手がわたしの腰にそえられ、ぐいと引き寄せられたことにはもっと驚く。えっと、な、なんなんだこの状況。上条らしからぬ行動にばっと顔をあげて上条をみる。…と、上条らしからぬ表情。きらきら輝いた微笑みをこちらに向けていた。え、えっと、

「かみじょ、」

名前を呼ぶより先に、すぐ近くの壁に叩きつけられた。一瞬なにが起こったのか分からず目をつむる。目を開けたときにはすぐ近くに上条の顔があって、上条の両手はわたしを逃がさないように両肩上の壁あたりについていた。

「俺、なまえが好きだ」
「え…」
「…壊したくなるくらい好きだ」
「こわし、たく?」
「最近はずっと、どうやったら怪しまれずになまえと二人きりになってそのままどこかへ閉じ込められないかってことばっかり考えてたよ」
「!」
「けど、気づいたんだよ。堂々とあいつらの前で壊しちまうのもいいかもしれないって、な」

上条が、何を言っているのか分からない。上条が、何を考えているのか分からない。好きって何。壊したくなるくらいって何。閉じ込めるってどういうことなの。ねえ、目の前のあなたって、ほんとうに上条当麻なの?

「なまえ、今からお前のこと壊しちまうけど…それでもいいか?」

あなたのその振りかざした右手には何があるの。



110308