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「なに笑ってンだよ」

アクセラレータは、ほんとうにばかだ。けど、わたしはそれよりもっと、ばかだ。誰かを救う力もなければ、自分をまもる力もない。無力な、無能力者だ。現実に抗えば抗うほど、わたしはあなたを傷つけた。ねえ、もうわたし、いないほうがいいのかもしれな、
そんなことを思っていたわたしの腹に、容赦ない一撃。まさか、杖でやられたのだろうか。気が付けば尻餅をついていて、視線を上に向ければ不機嫌な顔をしたアクセラレータ。

「テメエはバカみてェなことを考えてる時にそうやって笑う癖、どうにかしろ…」
「なんのこと、かな」
「…チッ」
「舌打ちだけじゃわかんな、」
「笑うなっつってンだよ」
「!」

アクセラレータが尻餅をついたわたしの隣に腰をおろし、わしゃわしゃとわたしの髪をかき混ぜた。うん、ごめん、ごめんねアクセラレータ。バカみてえなこと、か。違う。違うの。ほんとのことなんだよ。前からずっと思ってた、わたしはいないほうが、いいのかもしれないって。弱くてごめん。弱くて、逃げてばかりで、救いようのないわたしに優しくしてくえて、ありがとう。

「俺はテメエのそンなンが…見たいンじゃねェ」
「?」

わしゃわしゃ、と髪をかき混ぜていた手が動きを止めて肩におりてきた。ぐ、と少し強い力で肩を引き寄せられる。わたしはなんだろう、と横目でアクセラレータの方を見た。アクセラレータは俯いて、なぜか、震えていた。

「アクセラ、」
「黙れ。何も言うンじゃねェ…」

まだ何も言ってないんだけど。そう思いながらアクセラレータを見る。ぱ、と目に入ったのが髪の隙間から見えた耳。…なんか、耳が赤いような…?

「っ、見ンなアホなまえ」
「えっ、あ、ごめん」
「クソが…」
「…?」
「ッ…お前には…黄泉川や芳川、あのクソガキといる時の…何も考えずにバカみてェに笑ってるほうがお似合いなンだよ…」

肩に置かれていた手が離れてアクセラレータがわたしの後頭部を軽く小突く。いたい。けど、その手の優しさにまたうっかり甘えてしまいそうになる。アクセラレータは、やさしい。わたしなんかにやさしくして、アクセラレータはやっぱりばかだよ。

「ね、え」
「…」
「まだ、アクセラレータの傍にいても、いい、かな…」
「……勝手に離れやがったら、そン時はブッ潰すぞ」

そんなバカが大好きな、バカなわたし。離れたくない、って…甘えてみてもいいかな。



馬鹿がふたり

23 mar 21

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