ohanashi | ナノ

手を繋いだときの温度、抱き合ったときの温度、どちらの方が心地よいだろう。正解は、どちらも同じくらい、比べることのできないくらい、心地よい。だって、わたしは、どちらも好きなんだもの。
そうだ、抱き合うんじゃなくてわたしからガバッとやってみるのもいいかもしれない。

「当麻」
「うおっ!」
「えへへ、大好き」
「!」

振り向いた当麻の胸にダイブする勢いで抱きついてみる。その勢いで当麻は少しよろけるけど、ちゃんとわたしの背に手をまわして抱きとめてくれた。それが嬉しくて、当麻の顔をみてひさしぶりにありふれた愛の言葉を言ってみる。当麻は一瞬驚いたような表情でわたしを見て、ちらりと横に視線をそらした。あ、ちょっと顔が赤くなってる。もしかして照れてるのかな。よし、もっかい、

「俺も大好き」
「へ」
「なまえのこと、大好きだ」

一回目は本気。二回目はちょっとからかうような気持ちで、そう思ってわたしが口を開くより先に、当麻の口からその言葉が出てきた。突然のことで戸惑い、じっとわたしを見つめてくる当麻から目をそらせなくなる。真剣な目で、じっとわたしを見つめて、けどその顔は少し赤くて、なんていうかすごく甘い空気に包まれる。
今度は赤くなるのはわたしだ。当麻がそんなわたしを見てぷっ、と笑いをこぼした。ち、ちくしょう!笑われた!恥ずかしくなって当麻の胸を押し返そうとすると逆にぎゅうっと抱き寄せられた。そして、わたしの背にまわされていない方の手でやさしくわたしの頭を撫でた。ああ、この温度もすきだ。

「って、こ、子供扱いする…」
「してねえよ」
「う、と…とうま…」
「なんだ?」
「か、おがちか」
「ほらな。子供扱いなんてしてねえだろ」

そう言って口の端をつりあげる当麻は、こんな風にたまに意地悪になる。口を開けば息のかかる距離で、胸がばくんばくんと大きな音をたてる。い、いつまでこんな格好でいるつもりなんだ。心臓に悪いので、できるだけ早く離れたいのだが。わたしはじいっとこちらを見つめてくる当麻から目をそらすのに必死だ。

「は、はなれて」
「なんで?」
「なんでも!」
「やだって言ったら?」
「う…」
「ごめんごめん。泣くなって」
「泣いてない!」

子供をあやすみたいに、ぽんぽんと頭を二回撫でて当麻はわたしから離れた。当麻とは一歳違うだけなのに、どうしてこんなに子供扱いされなくちゃいけないんだろう。なんていうか、余裕のある当麻とそうじゃないわたし、って感じでちょっとむかつく。この歳になってまで、こんなことくらいで泣くわけないじゃんばか当麻!まあそんなことを言ったところではいはいごめんなー?なんて軽く言われてしまうのだろう。けど、それでもわたしは当麻がすきだ。だいすきだ。ばか。だからささやかな悪戯をしてみる。

「当麻、ちょっと屈んで」
「? こうか」
「うーん、もうちょい」
「おう……、?」
「よい、しょ」
「なまえさんさっき嫌がってたわりに今度は自分から近づいてくるなんてどういうことで、っ!?」

ほんとうに一瞬。触れただけ。あれなにこれ、自分がすごく恥ずかしいんじゃないか、なんて今更気づく。慌てて当麻から離れて背をむける。

「仕返しだばーか」
「いや、あの、……上条さんちょっとときめいちゃったんですけど」
「そりゃどーも」
「なまえ、あの、もっかい……」
「は!?や、やるわけないじゃんばか当麻!」

その言葉にばっと振り返るとなぜか近づいてくる当麻。えっ、なにこの変態、なんでこっち来るの。なんでちょっと顔にやけてんのよ。えっ、ちょ、まさか、

「じゃあ今度は俺から」
「させないから!ちょ、近寄ってくん、わわ…っ」



気にならない身長差

23 mar 14

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