ohanashi | ナノ

校舎内をひたすら走るわたし。これぞまさしく、青春…だな。足はそこまで遅くないと自分では思っている。体力はない。だがしかし、逃げるほか道はない。…なぜなら、放課後に居残り補習なんて私の青春には必要ないんだもの。そういうわけで、さようなら小萌先生!華麗に逃走劇を繰り広げているわたしではあるが、やはり体力はないわけで。悲しいかな、すぐ後ろにわたしを追いかけてくる足音が聞こえます。ガシッ、と捉まれた腕にわたしは大人しく足を止める。こうもガッシリとつかまれているのに逃げようなんて考えるほどわたしはお馬鹿じゃないんです。ごめんなさい小萌先生もう逃げませんから。…まあ時と場合によりますが。だから課題増やすなんて言わないでくださいね!息を切らしながら振り返ると、そこには小萌先生が……いなかった。

「か、かみじょ…う…」
「一人だけ逃げようたってそうはいかねえんだからななまえ。青髪や土御門のやつまで補習逃れたみたいだし…上条さんは今回の貴重な補習仲間であるなまえさんを絶対に離しませんからね!」
「上条って悪魔だったのね」
「なんとでも言え。…戻るぞ」
「うん、じゃあ…はい!」
「なまえさんは何をなさってるんでせうか?」

上条に捕まってしまうなんて不覚だった。もう本当に諦めて補習を受けるしかないらしい。しかしだね上条くん、わたしはもうライフがゼロなんだよ。その意味が分かるかね?わたしは掴まれていない方の手を上条の方に伸ばした。

「おんぶ!」
「……は、はい?」
「全力疾走したせいでなまえさんはお疲れな模様ですというわけでおんぶ!」
「て、天然さんめ…!」
「天然さん…?」
「仕方ないからなまえさんの体力が戻ってくるまで待ってあげましょうか」
「えーおんぶはー」
「上条さんはそんなことしませんっ」
「まあ冗談だけど。ところで、上条はなんで顔赤いの?」
「!?!」

おんぶなんて冗談です。わたしみたいなゾウさん並に重い女の子をか弱い上条が持てるなんて思ってませんから当然です。ところで上条の顔が赤いのは何故なのでしょう。あれですか、走って追っかけてきたから赤くなっちゃったんですか。けど上条はもっと体力あるイメージだったんだけど…わたしの思い違いなんでしょうか。

「上条さんの顔が赤いのはどっかの天然さんのせいです!」
「天然さん…?さっきも言ってたけど誰のこと…」
「誰ってそりゃ、なまえのこと…」
「わたし?なんかしたっけ?」
「そうそれ!それが天然さんだって言ってるんですよ!」
「?」
「あー、もう平気か?…教室、戻るか」
「わたしは天然さんじゃないと思うよ?…戻りますか」
「え、えっと…なまえ…この手は、」
「上条から掴んできたんじゃん」
「そう、だけど」
「離したらわたし逃げちゃうよー、だから離さないでね上条!」
「…それでこそ天然…、なまえだな…」
「ん?なんか言ったー」
「いやなんも」



110208:つかまえる

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