カーネーション


今日は大切な日。赤い花をメインに可愛く仕立ててもらった花束を大事に抱えて、真島建設へと向かった。

「こんにちはぁ」
「姐さん、こんちはッス」
「真島さん居ます?」
「親父なら、いつもの事務所にいますよ」

その辺にいた組員の人に声をかけると、彼はいつもの場所とプレハブで作られた場所を指す。きちんとお礼を言って働く従業員たちを横目に事務所の扉を開けた。

「こんにちはぁ」
「おう、こないな昼間に珍しいやんけ。なんか用か?」
「今日なんの日でしょうか」

五月十四日。
真島さんは嬉しそうに目を輝かせて「祝いに来てくれたんか」と私の持つ花束を見ていた。
隠すこともない、これを渡しに来たのだから。近寄って、花束を真島さんの目の前に差し出した。

「お祝いというか、お礼?」
「お礼?」
「いつもお世話になってるから、お礼」
「……世話はしとるけど」

キョトンとした顔をする真島さんに「今日、母の日」とカーネーションで作られた可愛らしい花束を渡した。

「いつもありがとう、お母さん」
「だれがお母さんや」
「カーネーションだよ、可愛いね」
「可愛ええけども……」
「……嘘だよ、お誕生日おめでとう」

花束の中に紛れ込ませていたメッセージカードを引っ張り出して真島さんに渡す。【Happy birthday】と書かれたシンプルな文字を読んだ真島さんに、追加で「カーネーションの花言葉、母の愛以外にもあるんだって」と伝える。

「教えてくれるんか?」
「……熱烈な愛、なんだって。良かったね、真島さん私に愛されてるよ」

そう言ってしまえば、真島さんはヒヒッと笑ってから「嬉しい限りやのう」だなんて喜ぶから、また愛を伝えたくなってしまう。



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