十三
十三回目の身投げ、天気がいいなと金髪は笑う。空は雲一つない青空で、日差しは暖かい。屋上には金髪と自分以外誰もいなかった。当たり前だ、もともと立ち入り禁止なのだから。どうして金髪が毎度毎度ここに侵入出来るのかは院内の七不思議の一つになっていた。不意に金髪が自分の手を離したから極自然にこれから飛ぶのだと思った。どうしてだか今日だけは、ここにくる間ヤツは自分の手を離さなかった。
男が建物の縁に立つ。自分の知らない一度目の身投げもこうだったのだろうなとぼんやり思った。初めから何一つ変わらない。何度も何度もヤツは死にぞこなって、その度に自分は生き返らせたというのに。その傷を塞いだのは誰だと問いただしてやりたい。そんなこと知りもしないだろう金髪は振り向きながら言った。自分が知る、数少ない男の長所であるきれいな青い瞳がこちらを真っ直ぐ見ていた。そして柔らかく微笑みながら甘く囁く。
「水色が好きなんだ」
ハッとする、この言葉の続きが知りたいと思った。
「待ってくれ」
無意識に呼び止めてしまう。初めてだった。男を呼び止めたのはこれが、最初で、最後。
次の瞬間、青空に浮かぶ金色を見た。
13と
730の
追いかけっこ