十一
十一回目は溺死。
洗面器に顔をつっこんだままピクリともしないその姿はなんともシュールである。
「マヌケだった。」
夕方の病室で率直な感想を述べてやると、いつも通り大袈裟なふざけた態度で男は喚き散らした。
「笑ってんな!」
「笑ってない。」
「笑ってんだろうが!」
金髪の表情の変化は目まぐるしくて鬱陶しい。鬱陶しい?その表情一つでも見逃すのが惜しくて、知らず目が離せなくなった。視覚を独占する、縛られる、だから鬱陶しい。
「マヌケだった。」
再度繰り返す。もう金髪は怒りも騒ぎもしなかった。代わりに困ったように笑いながら静かに言った。初めてみる表情だと、なんとなく思っていた。
「笑えよ、先生」