五
五度目は首吊りであった。
金髪が無断で自分の研究室の本を床いっぱいに広げているのを発見したのはその2日前だ。
部屋の真ん中らへんに我が物顔で寝そべっていた。問い詰めたいことが多すぎて結局面倒臭くなって好き勝手させることにする。
ご丁寧にも用意されていたコーヒーを飲んでいると、ふらりと金髪が寄ってきた。
「なんでスーツ」
「さあ、なんでだと思う」
「ううん」
沈黙。出張かあ、一人ぼやきながらしばらく金髪はまじまじと自分を眺めている。
「首きつくねぇの、緩めれば?」
また沈黙。何も言わず少し顔を上げて首を晒してやった。しばらくしてから金髪の白くて長い男の指が手馴れた様子で自分のネクタイを解く。
「俺もスーツ似合うんだぜ?」
穏やかに男は微笑んだ。