ちょっと昔の話


「ふれあい広場」

そんないかにも田舎の寂れた動物園らしい看板を横目に、俺たち2人は藁だらけで糞だらけの小屋に足を踏み入れた。飼育員さえいない、誰もいない。先にサンジが金網と木で作られた手作り勘満載の扉をくぐる。鍵は壊れていて穴の空いた場所は針金ハンガーを変形させて補われていた

「ウサギ逃げんだろコレ」

率直な意見を主張したら、サンジはこの穴から逃げることを許さないウサギのプライドを逆手にとった頭脳的策略だと言い張った。どうでもいいし、言った本人が一番どうでも良さそうだった

「そんじゃさわりますかね」

そう言ってサンジは屈んだ、そんなさわり方があるかと思ったが黙って後ろで見守る

「つーかさ、コイツホントにウサギ?耳なくね?」
「ストレスで咬んだんだろ」
「自分で?どえむ、」
「あほ、咬まれたんだろ」

顎で耳の長いウサギを指してやる、サンジはチロリと一瞬だけそっちを見た。それから呟く

「ウサギでそうなりゃな」

ふは、と自嘲的に笑った。笑った男の白い背中にある大きな傷を俺は知っている。ただ何も言わずに、耳のないウサギを撫でる男の後ろ姿を見ていた。

「よいしょっ!」

急にサンジはそのウサギの首をつかんで持ち上げた、と思ったら「ほいさっ」のかけ声と共にそのウサギを柵の外へと投げ捨てた。哀れなウサギはそれでもなんとか着地して、さっさと小屋の裏の林に消えてった。未練はないらしい。林がどこに繋がっているのか俺は知らないし、それはサンジも同じだろう。

「いけいけ、どこにでも行け!」
「行けってお前、お前のウサギじゃねーだろ」

呆れたように言ってやれば、金髪はとても胡散臭いものを見るような目で俺を見た。ジーンズの後ろポケットから潰れたタバコを取り出して口もとに持っていく。言った言葉に深い追求をされたくない時によくやる仕草だ、つまり照れ隠し。銜える前に不服そうにやつは言った

「俺だってお前のじゃなかったじゃん、でもお前は俺にああやってくれただろ」




爆発しろ

「意外だよなあ」
「あ?」
「お前の耳、ピアス」
「ん、コレか」
「誰よりもつけなさそうなのに…クソ腹巻きが洒落気付きやがって!他に気にするとこあんだろ!腹巻きとか腹巻きとか腹巻きtk」
「いや何でてめー怒ってんだ」
「三連ピアスだもんなあ、痛くなかったの」
「(…こいつ)……別にどうってもんでもねえ」
「えーでも穴あけんだろ」
「おー」
「どんなん?」
「……」
「ちょっ…!?ヤメロ…おまっ!なに人の耳噛んで…あっ///」
「こんぐれえじゃね」
「は、」
「ピアス、痛さ」
「…だからって噛むな!…まあ、でも。うん、なるほどな」
「おう」

「……」
「……」

「「いたのか、ウソップ」」
「………………いましたよ」




ひとりよがりのふり


結局人間だから上手くいかないことばかりさ。そんで俺はいつだって自分のやらなきゃいけないことと、やりたいことがよくわかってらっしゃる。頭いいかんね、俺様サンジ様。いつだってその2つは一致しないんだ。そんで俺の頭ん中っていつでもmust>wantなのな、つまりやりたくねーことでも案外笑ってできちゃったりする訳。で、お前はその逆なの、わかる?間逆。だかんな、お前と俺が…ってオイちょっと聞いてる?マリモ聞いてる?




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