俺は時間を止められる、難しいことはよくわからないがそういう才能がある。ある出来事を境に手にしたその才能は、はっきり言って俺の今までの人生をめちゃくちゃにした。それまでの俺が知るはずもない大きな組織に俺は捕まって脅されて、それこそなんでもやった。ほとんど殺しだったけど

戻ろうと必死だったのさ、俺が大切にしてたあの場所に帰りたくてな。結局壊れたものがもとに戻るなんてことなかったが

そんな俺の前にマリモくんが現れたのは何時だったっけ。うん、そう、そこで固まってるやつな。そっくりじゃね?え、マリモに。そいつが「やめとけ」って言ったから、時間を止めることもしなくなったんだよ俺ァ。
そんなすぐ安請け合いしたわけじゃねえぞ、色々もめたんだよ。だってお前、あいつさァ、俺がずっと苦しんで抱えてたもん、あんな軽くさァ…。でも俺が折れてやった、大人だったんだ。うん、でも今止まってるよな、おかしいな。あ―ハイハイそうだよ!最後の最後、俺は時間を止めた


…かれこれ10年は経つかな。時計も当然止まってっからよくわかんねーのさ。俺なあ、こいつが死ぬ一秒前に時間を止めたから、時間を流せばこいつ一秒後に死ぬの。でもこのままだったら、こいつ死ぬことねえだろ。俺の言いたいことわかるな?


言っちまうとこの才能の始まりもこんな感じだった。ジジイと別れるのが哀しくて怖くてしょうがなくて、…ガキだったからな。俺は時間を止められるようになったんだ。学習能力0、これは認めざるを得ねえ


お前はどんな辛いことがあったんだろうな?止めちまうくらいだもんなァ…ま、聞かないけどさ


でもさ、よく考えろよ少年、俺が言えたことじゃないけどな


お前はいつ戻んの?もうちょっといんの?それともお前も10年?
俺はな、まだここにいるよ。あのゾロの瞳がな、最後の一秒俺を見るその瞬間を楽しみにとってんだ。…そんな目でみんなよ、そうだな、ちょっと強がっちまった、怖いんだよ当たり前だろう。一瞬で最後の、一度きりの一秒だかんな。もう、戻れやしないからな。さっきも言っただろ、壊れたもんは元通りになんかなりゃしねえよ


優しい青い瞳の金髪の男は、およそ言葉と不釣り合いな穏やかな顔をして、僕に言った


「…呪われてんだこの一秒に。」




幸福な呪い



ドラマスペックの、にのまえ君が愛しすぎて妄想せざるを得なかったんです
ほんと面白い…スペック…



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