叩き起こされたようだ、とその時中学3年生だった緑間真太郎は思った。夢を見ていたことに今まで自分が気づかなかったらしいことも、その時初めて知った。思えば悪夢で、しかし同じくらい心地よく幸せだったこともその瞬間知った。キセキの世代となら多分なんでもできたし、赤司なら自分達をどこまでも導けたはずだ。

はずだった。

「今、お前はなんて…赤司…」
「だから」

赤司が緑間真太郎から目をそらすことは一度だってないし、それは今も変わらない。しかし今となってはもう意味が違うのだ。もう愛情も期待も、何もないようにみえる。目がそらされることも、以前のようにしっかりとその両目に緑間がうつることもないのだ。

「所詮、僕らは中学生だったな緑間」

してやったり、と言う顔で赤司は笑った。いたずらなそれは彼らしくない、なのにとても懐かしい笑顔だった。多分全てが上手く回らなくなる前にこうやって時々赤司は笑っていたのだ。今の緑間にはもう思い出せないから、これは憶測でしかないが。

彼の言葉は未だに緑間真太郎を縛り付けている。思えばあれは赤司なりの拙い復讐で、誇り高い彼には似合いの小さすぎる復讐だった。だからあのときは気づけなかったのだ。

誰よりもキセキの世代を愛し傷つけ、誰よりも彼らに裏切られた赤司の。




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