最期はさっぱり消えてしまいたいの



「ねーむろちん知ってる?新幹線に飛び込んだらみんな赤い飛沫になっちゃうんだって」電車の待ち時間、眠そうな紫原は目を擦る。2人並んだベンチは冬の空気に晒されたせいで氷のように冷たい。氷室は何も言おうとはしなかった。「それ以外はなーんにものこんないんだって」やっと氷室は苦笑する。「それホントかい?」そう言って細長いきれいな指を絡めて、冬でもあたたかな紫原の指の間をゆるりと撫でた。「でもアツシの最期がそんなのだったら、俺はずっとアツシを探し続けちゃうよ」だから駄目だ、そう呟いて次は手の甲をあやすように撫でる。「まだなんも言ってねーし俺」紫原は拗ねた子どもみたいに唇を尖らせたまま俯いた。どうしてムロチンはわかってしまうんだろう。ボンヤリ考えながら、自分が今とても泣きたい気持ちなのだということに気づく。

「アツシはちゃんと、最期までアツシのままでいてくれよ」

約束だよと、氷室は本気か冗談かもわからない表情で笑った。





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テーマ「人外ファンタジー」
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