望まないエンディング




設定死ネタヤクザパロもどき注意

「欲しくないの」そう問われて怯えながら答えた。「いらないいらないいらない」呪文のように紡いだ言葉にあわせて引き金を引く。それに合わせて高尾の体が不自然に跳ねるのを玩具みたいだと、頭の中のどこか冷静な自分が呟くのを聞いた。最後にこちらを見た高尾は笑っていた気がする。俺はそれが一等怖かった。震えは止まらないし耳鳴りも酷い。こんなに取り乱すのは生まれて初めてだ。「いつか真ちゃんがどうしようもなくなったら俺が抱きしめてあげる」そう言ってくれた唯一の人間を今この手で殺した。
「ひぐっ」
喉がひきつって上手く呼吸ができない。銃を投げ捨てて冷たくなりかけている彼に無様に駆け寄った。縋りつきながら気づいたのは、高尾の頬にもうっすらと涙の痕が残っていたことだけだ。何故かそれを見て俺は安堵する。「真ちゃんに自由をやるよ」そう言って両目を細める、あの仕草が大好きだった。

後を追うつもりで彼の懐を探ったのに、いつもの場所に拳銃は見当たらなかった。そこで俺は自分の決定的な判断ミスに気づかされてしまう。高尾に殺されるよりも、高尾を殺すことの方がずっと苦しいことなのだ。
いよいよ俺は辛くなって、もういっそお前に殺されたかったと子どものように泣きながら高尾を責めた。殺したはずのコイツにまで甘えてしまう等、どこまで俺は卑怯なのか。
「自由などやはりくだらないのだよ」
手に入れたものはあまりにも陳腐で残酷だ。お前がくれた自由にお前がいないなら、こんなもの最初から望まなければよかった。





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