悪いのは誰


「あれはダメよ」

言われる前にドアを閉めてしまおうと思ってたのに、それはかなわなかった。急に家にいってもいいかとメールがきたのが昨日の夜中の2時。それじゃあ明日の午後1時にと約束した通り自宅でナミさんと2人、お茶をして朝早く起きて作ったシフォンケーキをお出しして、ナミさんだって自分だってさっきまであんなに甘くてあったかくて優しい時間を過ごしたと言うのに。
ナミさんがここにきた理由なんて最初から知ってた、知ってたからいつもより細心の注意を払って完璧な会話のエスコートをして、すごく名残惜しいけどそれじゃあ待たね素敵なレディ今度は夜の街で会おうだなんて言って(言っておくがコレは本音で決して社交辞令なんかじゃない俺はいつでもナミさんにメロリンしてる)これはもしかして上手くいったんじゃないかと思った矢先だった。


ガツンと閉まるはずだったドアに何かが挟まる音。ぎょっとして下を見れば黒の品のよいハイヒールが挟まってて、(あれはさっきナミさんがはいてた奴じゃねぇ?)
そのまま視線を上へ滑らせば、細く開いたドアの向こうから怖い顔(でもお美しい)したナミさんがこっちを睨んでいた。
それから言われた、

アレハダメヨ

アレハダメヨ?アレハ…

ふむ。

「シフォンケーキお気に召さなかった?」
「ううん、美味しかった。殴るわよサンジくん。」

あは―と俺は情けなく自嘲する。優しいナミさんは悲しそうに顔を歪めてもう一言。聞きたくないなあ、思いながらジーンズのポケットにタバコを探すけど見当たらない。さっきリビングのテーブルの上に置いたのを忘れてた。

「ゾロはくいなの恋人よ。」

「サンジくん、傷つくのはあんただけ。わかってるでしょ。」
忠告したわよ、そう言ってナミさんはさっさと階段を降りていった。

残された俺はゴツンとドアに頭を預けて考える。ハアア…と大きくため息を吐けば、ため息を吐く度ジトリとジジイに睨まれたことが頭をよぎった。


でもさあ、それって俺だけが悪いのかなぁ。だってあいつの眼見たことある?どっちを選ぶなんて明白だ、俺自惚れちゃうよ本当。
俺はあいつにも問題があると思うね。





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