▼ 1.南雲鉄虎
テスト期間、いつもの様に図書室で勉強していた。
「あ、なまえの姉御~!姉御も勉強ッスか?」
静かな図書室に声を響かせながら鉄虎くんが近寄って来た。
「鉄虎くん、しーっ!」
人差し指を鼻先に添え、静かにする様にと促すと彼はあたふたした後辺りを見渡し、そっと私の隣に腰掛ける。
「へへ…っ、すいませんッス。」
どこか照れくさそうに頬を掻く鉄虎くん。
「鉄虎くんも勉強?」
「はいッス!俺、数学と英語がてんで駄目なんすよね…。」
そう言って数TAと英語の教材を広げた。
「数学なら、教えてあげようか?」
「マジッスかぁ!ぜひ!ぜひともよろしくお願いしますッス!」
頭を机スレスレまで下げながら鉄虎はまたもや大きな声を響かせた。
「だから静かにっ!」
…
「で、ここを因数分解したら…」
「う〜みゅ…なるほど!先生より全然分かりやすいッス!」
なんだかんだで時計を見ると既に8時近くになっていた。
「すいませんッス、俺の勉強ばっかり見てもらっちゃって…。」
「気にしないで?そろそろ帰ろっか」
何気ない話をしながら薄暗い夜道を肩を並べ歩いていたら、不意に手の甲を鉄虎くんの手が掠める。
たまたま当たったんだろうと気に留めずなおも歩いていると今度は互いの小指が絡まり合った。
跳ねる様に伏せていた顔を鉄虎君の方へと向けると暗がりの中、彼の頬は朱に染まっていた。
「あの…その、今回のテスト。折角なまえさんに教わったし、絶対良い点取ってみせるッス!
だから…えっと、良い点取れたら…ご褒美、欲しいんスけど…いいッスか?」
ちらりと向けられた目線、互いの瞳を交えた後微笑みながら小さく頷いた。
「鉄虎くんが100点を取れたら考えてあげるよ」
「ひゃ、100点ッスか…?!いやいや、ここで弱気になっちゃ駄目ッスね!姉御の為に、俺、必ず100点を取ってみせるッスよ!」
握り拳を作る勢いでそう宣言した鉄虎くんはなまえの手を取り、またもや照れくさそうにはにかんだ。
Fin.
← |
→
Main
Top