Short | ナノ

お化けなんて嘘さ

私とゆうたくんは付き合い始めてかなりの日が経つ。

そんな私とゆうたくんは今日はお泊りデートの日だ。

何回か私の家に来ては一緒にだらだらと夜更ししたり…まぁ、その恋人らしい健全な事も幾度かして来た。

毎回私の家である理由は、単にゆうたくんの家だと兄のひなたくんが居るからだ。
3人で楽しくお泊りもいいとは思うのだが、ゆうたくんが承諾してくれない。

「アニキが居たらなまえさんに触れられないし」

そう言って少し拗ねたように頬を膨らますゆうたくんはとても可愛い。

さて、話は逸れたがいつものように私の家で2人で夕飯を作り、肩を並べてお片付けをした。

「じゃあ先にお風呂行ってくるね」

私がお風呂から出て、次にゆうたくんが入る。

私は自室で髪を乾かしていた。

いつも下を向きながら髪を乾かすなまえは乾かし終わった後はいつもボサついた髪が顔を覆い隠し、まるでお化けの様な風貌になってしまう。
その乱れた髪をクシで梳かすのだが、今日はそのままゆうたくんが部屋に来るのを待っていた。

「なまえさーん、お風呂ありがとうございまぁぁぁあ!!?」

鼈甲飴の様な髪色に滴る水滴を拭いながら蒸気で軽く頬の火照ったゆうたくんが姿を表したと同時に、なまえの姿を見て声を上げる。

「うーらーめーしーやー」

私はつい楽しくなってしまって髪を振り乱したままゆうたくんに忍び寄る。

すると本気でビビってしまったゆうたくんは引く式のドアを何度も押しては開かないと悟ったのかスペースの空いている私の背後へと大回りをして逃げる。

くるりと反転して詰め寄ればゆうたくんはベッドに足を引っ掛け、そのまま乗り上げ、シーツに尻餅をついたまま半涙目で私を見上げる。

「…ふ、ふふっ」

つい溢れ出た笑い声すらゆうたくんには恐怖だったのだろう、いまだ気付かぬ彼に跨がると腰の辺りに手を沈め、顔を寄せる。

すると流石に気付いたのかゆうたくんの手が私の司会を遮っていた髪へと伸び、掻き分けた。

「なまえさんまでイタズラしてくるなんてヒドイですよ〜」

フッと肩の荷が下りたかのようにベッドに全身を沈めたゆうたくんを追うように顔の横に両手を付いた。

髪の合間からエメラルド色の瞳を捉えると再び伸びて来た手が私の視界を広げる。

「俺の好きななまえさんの顔、隠さないでください」

分けた髪を耳へと掛け、軽く手櫛で私の頭を整えたゆうたくんが小さく笑う。

「好きなのは私の顔だけ?」

なんて意地悪を混ぜると今度は付いていた手の力はガクンと抜け、ゆうたくんの首元に私の顔が収まる。
どうやら無理矢理後頭部を抱き締められたらしい。

「そんな意地悪言うなまえさんには、俺の愛たっくさん受け取ってもらわなきゃね!」

口元に笑みを浮かべたゆうたくんの空いた手が寝間着の裾から素肌へと侵入しては、私の背中を伝う。

「大好きです、なまえさん。顔も、声も、仕草も、頑張り過ぎちゃう性格も…俺だけに見せるエッチな表情も」

抱き締められている為自然と耳元に掛かる吐息の混ざった声は私への愛を囁きながら、ブラのホックへと指を引っ掛けた。

あぁもう、可愛いだけじゃなく、エッチの際のゆうたくんは雄全開だ。
けれどそんな表情は私にしか、見せてない。

お風呂上りの高い体温が冷める事なく、身を寄せ互いに溶け合うような夜を、今夜も君と。


Fin.


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