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6.脳裏に焼き付く青と指先の熱


目の前の自分勝手な自称吸血鬼と喫茶店に入って早20分は経っていた。

「嬢ちゃんや、そんなにつまらなそうな顔をするでない。我輩さみしい」

「早く帰りたいんですけど」

歳上であるはずの朔間先輩の目を見ることなく、ガラスの外へと目線を向けながら言葉を返すと不意に見慣れた姿が目に入った。

え…あれって、

私の様子に気が付いたのか朔間先輩が同じ目線を辿る。
その目線の先には

「おぉ、アレは泉くんかのぉ」

確かに瀬名先輩だった。
あろう事か朔間先輩は手を振っている。

気付かれて困る事はないのだが、避けている身としては非常に気まずい。
振っていた先輩の手を掴みテーブルの上に押し付け、一息付き目線を戻すと、朔間先輩とは対照的な青い瞳と視線が交わった。

少しつり目の綺麗な瞳を見開いた後、ガラス越しでも分かる程盛大に舌打ちを漏らし、瀬名先輩は踵を返し大股で歩いて行ってしまった。

「行ってしまいおったの…」

そう言う朔間先輩の口調はどこか明るい。
不思議に思って再び目線を先輩へと向けると、重ねていた手に指を絡めて握ってきた。

傍からみるとただのイチャついてる恋人の様に…

思わずバッ、と手を振り解いた。顔に熱が集まって来るのがはっきりと認識できる。

「可愛いのぉ、手を握った程度でそんなに紅くなるとはの、思わず手が出てしまいそうになるわい」

「…帰ります、お金置いときますね」

ガタンと席を立ち、自らの分のお金を机に置くと早々にお店を後にした。

瀬名先輩に見られた…、別にやましい事をしていた訳ではない。
けど、先輩のあの様子はどこかおかしかった。

それに加えて朔間先輩と絡め合った指にはまだ微かに熱が残っているような気がした。

もう、何これ。

自分でもよく分からないジレンマに陥りながら自宅へと歩みを進めた。

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