Medium | ナノ

5.赤と青

「ほれほれ、なまえの嬢ちゃんや。これなんてどうじゃ?」

結局、朔間先輩と二人で来る羽目になった雑貨屋さん。
朔間先輩は先程からあれはどうじゃこれはどうじゃと楽しそうに気に入った手帳を見つけて来てはなまえの元へと持って来る。

…正直鬱陶しい、ゆっくり選ばせてくれないかなぁ。

そんな朔間先輩に小さな溜息をもらしていると、ふと目の端に青く光るものが見えた。

まるで吸い込まれるかのように光のもとへと行くと、それは深い海底のように妖しく、けれど光を反射してキラキラと青く輝く石の付いたネックレスだった。

…この色、まるで…

「ほぉ、まるで泉くんの瞳のようじゃのお」

バッと後ろを振り返る。
するとあの日と同じ様に妖しく微笑む吸血鬼が1匹。
口元は笑っているものの、青と対照的な真紅の瞳の奥はなまえを捕らえたまま笑ってはいなかった。

「嬢ちゃんにはほれ、こっちの方が似合うと思うぞい」

そう言って差し出されたのは、先程のと色違いだろうか、赤い石の付いたネックレスだった。

朔間先輩の瞳よりは淡いものの、その石の色は確かに先輩を連想させた。

「別に買うつもりで見ていた訳じゃありませんから。さっさっと決めて早く帰りましょう」

「そんな悲しいことを言うではない。我輩まだ嬢ちゃんと居たいのぉ」

朔間先輩の言葉を聞き流し、先輩が持って来る手帳とは別の手帳を選びレジに通した。
横で朔間先輩はしょんぼりしてたけど、そんなの知らない。

あの人選ぶのもは赤基調だったりコウモリがついてたりと、なまえの趣味ではなかったのだ。
どちらかというとなまえは赤より青の方が好きだった。
それが瀬名先輩を好きになった理由ではないけれど。

用事は終わったので帰路に着こうとする。

「では、今日はありがとうございました。失礼します」

「待て待て待て。まだ日も高いじゃろ、今度は我輩に付き合うのじゃ」

踵を返そうとする私の手を掴み歩き出した朔間先輩。
振り解こうにも意外にも力が強い。

…この、吸血鬼がっ!

向かった先は喫茶店。

促されるままテーブルについた。

帰りたいなぁ…。

|

Main
Top