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4.羽風先輩はお察しがいい


放課後。

げんなりとした表情を浮かべるなまえの両脇には、どこか浮かない表情を浮かべる羽風先輩、ニコニコと嬉しそうに笑みを携える朔間先輩がいた。

はたから見れば、両脇にイケメンを連れて歩くなまえは性別は違えどいわゆる、『両手に花』状態なんだろう。

しかし二人は花なんて綺麗なものではなく、言うならば羽風先輩はふらふらとした薫風、朔間先輩はお望みの通り吸血鬼とでも呼んだ方が相応しいのだろうけど。

どちらにしろ、そんなに美味しい状況ではないことは明らかだった。

「ところで今日はどこに行くんじゃ?」

「…なまえちゃんはどこか行きたいところある?」

対照的な二人の間に挟まれて問われた問いには

「…特にはありません」

とぶっきらぼうに答えた。

「そうだなぁ、…あっ! 前になまえちゃん『プロデュース用の手帳が欲しい』っていってなかった?
俺いい雑貨屋さん知ってるし、そこに行こうか?」

確かにそう言われれば以前、アイドル達の苦手な点や特徴などをまとめていたプロデュース用の手帳が底をついたので、そんなことを漏らしていた…様な、気がしないこともないような…。

それにしても流石羽風先輩、女の子のことに関しては記憶力がいいんだなぁ、と感心しながら頷くとにこりと笑みを浮かべなまえの手を取り歩くスピードを軽く上げた。

半歩、朔間先輩より前に出るなまえ。

慌てて羽風先輩に着いて行く様に足を進めようとするも、今度は後ろから腕を引かれた。

両手を引かれる体勢になり、思わず足を止め、後ろを振り返ると、眉間に皺を刻み、羽風先輩を軽く睨みつける朔間先輩が、なまえの手をしっかりと握っていた。

突然止まったなまえにつられて、羽風先輩も足を止め、振り返る。
そして苦笑いを浮かべると、なまえの手をパッ、と離した。

「ハハッ、怖いなぁ。
じゃあね、なまえちゃん。せっかくのデートだったけど、雑貨屋さんには朔間さんと行ってもらえるかな?」

早々に立ち去っていく羽風先輩。
状況がよく分からず、手の温もりに朔間先輩へと向き直ると、先程とは一変して綺麗な顔に微笑を浮かべていた。

「しょうがないのお、ならなまえは我輩と、その雑貨屋さんとやらに行くとしようかの」

…ホント、意味が分からない。

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