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2.デート行かない?

あれから事あるごとになまえを呼び付けては

「泉くんとはあれからどうじゃ?」

などと答えの分かりきった質問をしてくる。

瀬名先輩を避けまくって生活しているなまえにはどうも何も変化などある筈もなく。

その質問をされる度に心の中で舌打ちをかましては、にっこりと笑顔を貼り付け

「その答え、分かってて聞いてますよね?」






朔間先輩から

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From 朔間先輩

To みょうじなまえ
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けいおんぶのぶしつにくるのじゃ。


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と度々、平仮名ばかりのメールが送られ、呼び出されてはこうして、トマトジュースやら、昼ご飯やらを買ってきて欲しいとパシられる。

もし断ろうものなら

「あの時の嬢ちゃんの泣き顔は最高だったのぉ。あの顔をぜひ、泉くんにも見てもらいたいものじゃ」

と過去のなまえの恋心を利用してくるのだ。

なんともタチの悪い吸血鬼だ。

購買でトマトジュースを購入し、再び軽音部の部室へと戻って来る。

するとそこには羽風先輩の姿があった。
珍しい…。

「あっ、なまえちゃん。待ってたよ〜♪」

なまえへと向け、ファン絶賛の笑顔を浮かべながら手を振る羽風先輩を軽く無視し、朔間先輩にトマトジュースを手渡す。

「ちょっ、なまえちゃん? 俺の事見えてる?」

ただですらパシられ、機嫌の悪かったなまえは羽風先輩を横目で見遣る。

「なにか用ですか」

抑揚のない声色でそう返すも、羽風先輩は動じる事無く、嬉しそうに、にこにことしている。

「いやぁ、女の子とデートの予定があったんだけど急にキャンセルされちゃってさぁ。
どう?なまえちゃん、今から俺とデート行かない?」

…つまりは暇つぶしの相手になれと。

盛大に溜息を零した後、特にする事もなかったのと、このイライラした気持ちをリセットしたかったのでその言葉に頷く。

「えっ! いいのっ? 今日はツイてるなぁ♪」

刹那驚いた様に切れ長の目を瞬かせるも、更に嬉しそうに頬を緩める彼は、ごく自然になまえの横へと並び、肩を抱いてきた。

「じゃあ、行こっかっ! 朔間さんじゃあね〜」

なまえの肩を抱きながら部屋を出て行こうとする羽風先輩の背中から声が掛けられた。

「薫くんや、そのデート、我輩も同行しても構わんかの」

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