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1.おじいちゃん

「嬢ちゃんや、嬢ちゃんや」

「…。」

「嬢ちゃんや、嬢ちゃんや」

「…。」

「嬢ちゃんや、嬢ちゃんy「あぁっ! もうっ! しつこいです! なんですかっ!」

「おぉ、怖いのぅ。そんな顔をしておったら可愛い顔が台無しじゃぞい」

なまえは軽音部の部室に来ていた。
なぜなら、会いたくもない朔間先輩に呼ばれたからだ。

「我輩喉が乾いたのぅ。嬢ちゃんや、ちょいとトマトジュースを買って来てくれんかのぅ」

「…自分で行って下さいよ、おじいちゃん」

「これ、聞こえておるぞ」

小さな声でおじいちゃんと言った言葉を拾われ、指摘される。

渋々重たい腰を上げ、トマトジュースを買いに部室を後にする。

このままバックレたいが、そうもいかない。

なぜこんな事になったかと言うと、事の初めは瀬名先輩に想いを告げてからだ。







「好きです、瀬名先輩」

「…はぁ?アンタみたいなのが俺につり合うとでも思ってるわけ?鏡で自分の顔ちゃんと見て来なよぉ。
でもまぁ…アンタの事は嫌いじゃないし、別に…ってちょっとぉ!」

先輩の言葉を最後まで聞く事なく、なまえは駆け出していた。

元々叶うわけないし、断られても仕方がないと思っていた。
けれど実際に本人の口から言われると、流石にダメージは大きかった。

頬を伝う涙が、いかに先輩の事を好きでいたかを思い知らせてくる。

「好きっ、です…瀬名、っ先輩…ぅ、っう」

泣き声と嗚咽が交じった言葉。

「…ほぅ、これはいい事を聞いたのぉ」

背中から艷やかな声が聞こえたと同時に、影が出来る。

涙で歪む視界を背後の人物へと移すと、そこには悪戯な笑みを浮かべた吸血鬼が一匹…。


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