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14.すれ違う想い

「アンタには聞きたいこといくつかあるんだけどさぁ。昨日は随分と楽しそうだったねぇ?」

あぁ、朔間先輩に連れられて入ったカフェでの事だ。重ねてテーブルに置いた手はやはり見られていたらしい。
泣きそうに、何かを堪えるように唇を噛み締めた後、ようやく言葉を発する。

「…なんで、なんで瀬名先輩にそんなこと、言われなくちゃならないんですか。」

震えた声で紡ぐは、なんとも弱々しい虚勢を張った言葉の羅列。態度も声音も、全てが情けない。こんなところで強がったって、何もならないことは分かっている筈なのに。

「…はぁ?アンタ、誰に口聞いてんの?俺が聞いてんだからアンタは素直に答えて。」

「だからっ、瀬名先輩には関係ないって、言ってるんです。私と朔間先輩がどうなろうと、瀬名先輩には何も関係ないじゃないですか…っ!」

少しばかり声を粗げて、なまえは瀬名先輩に食って掛かる。その言葉を聞いた瀬名先輩は、深い海の底のような色を孕んだ瞳を見開いた後、なまえの元へと歩み寄り、上から冷めた目付きにて見下ろす。

「アンタさぁ、なんで俺が関係ないと思ってんの?もしかして振ったと思ってる?勝手にそう思い込んでどっか行ったのが悪いでしょ。…あの時俺は……」

ぴたり、そこで言葉を止めた瀬名先輩はとらえていたなまえの瞳を通り越して、視線は更に下へと落ちている。

昨晩、点々と2箇所に刻まれたまだ新しい朱色の傷を隠す様に貼っていた絆創膏へと視線が注がれいる事に気付いたなまえは、無意識下でその視線を遮るかのように首元を手のひらで覆い隠した。

「…は、なにそれ。アンタ、本当に尻軽じゃん。」

先程よりもより一層低く落とされた声のトーンにて鋭い言葉が降ってくる。その後首元を覆うなまえの手を掴み、無理やり退かせばもう片手で絆創膏を剥ぎ取り、そこを凝視。
何故か傷付いた様に顔を顰める瀬名先輩は、続いてなまえの鎖骨を晒すようにブラウスの首元を緩める。その後大きな溜息を1つ吐き出し。

「…アンタさ、俺の事好きなんじゃなかったの。くまくんのお兄さんと、簡単にそういう事するんだ。」

思考がぐらぐらになる。酷く傷付いた瀬名先輩に投げ掛けられた言葉に上手く返答を返す事が出来ず、下を向けば、再度溜息が聞こえ、次の瞬間には先輩は屋上から出ていってしまった。

どうしていいのか分からなくなったなまえはひとり取り残された屋上にて、膝を抱えひたすら声を殺して涙を流した。

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