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13.見破られた仮面

「あ、姉ちゃんおはよ」

いつもの朝。
いつもと変わらず家族と挨拶を交わしてして、いつもの制服に袖を通す。

その際に見えた、首元に浮かぶ丸い2つの点のような傷はまだ新しくて…。




昨晩、意識を失った私は朔間先輩に抱き抱えられて家に帰ってきた。
先輩は私を抱き抱えたまま私の部屋へと連れて行き、ベッドに寝かせると応対した弟といくつか言葉を交わした後に帰ってしまった。
そうして今朝までぐっすり眠っていたなまえは昨晩の出来事と今日のプロデュースの予定をぼんやりと考えながら学校へと向かう。





「なまえっ、おっはよ〜♪」

いつもの太陽のような笑顔を浮かべながらスバルくんが朝の挨拶をしてくる。
いつものように、いつものような笑顔を貼り付けて私も挨拶を返す。

「おはよう、スバルくん。
あ、今日は嵐くんとKnightsのプロデュースの打ち合わせをするからお昼は一緒に食べられないんだ、ごめんね」

「えー、俺なまえとお昼食べたかったなあ。
…ねえねえ、それも残念なんだけどさ、なまえ何かあった?」

「…え?」

言葉に詰まる、スバルくんの瞳はしっかりとなまえをとらえて離さない。数回唇の開閉を繰り返した後

「どうしてそう思うの?」

と尋ねると

「んー、なんていうのかなあ、今日のなまえは元気ないような気がして」

そう口にしたスバルくんは「俺の気のせいかもしれないけどね〜っ」と少しはにかんだ。
私はそんなにも顔に出やすいタイプだっただろうか、それともスバルくんの見抜く力がすごいのか。どちらにせよ、スバルくんに話せることではないとその場では笑顔を繕い、話を終えた。



そうして迎えたお昼寝休み、お昼を約束していた嵐くんの元へ向かおうとお弁当を手に腰を上げると不意に肩を掴まれた。

「ねえ、ちょっと。お昼付き合いなよ」

JKの様な口調で、けれども特徴的なその声の持ち主は振り返らなくとも分かる。下げた視線をゆっくりと後ろへと向けたなまえの表情は声の持ち主が何の用事なのかを考えるだけで怯えるような、それでいてどこか悲しげだった。

「…は、なんて顔してんの。とりあえずそれ持って、どこか人のいない所行くよ。」

腕を引かれるままなまえは素直に瀬名先輩の後ろを歩く。途中すれ違った嵐くんは約束していたなまえが連れて行かれる様子に怪訝そうに眉を潜め瀬名先輩に声をかけるも「うるさい」と一蹴されてしまった。



屋上にてようやく足を止めた瀬名先輩がこちらを振り返る。

「何の用事でアンタを連れて来たかは分かってるよねぇ?」

…あぁもう、気まず過ぎて泣き出してしまいそうだ。



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