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6.まだ知らぬみょうじへの想い

その日、結局俺はみょうじの腫れた目の理由を聞く事なく家に帰宅してはベッドに転がった。

たかが新しいクラスメイトの事がなぜこんなにも胸に引っかかるのか。

他の奴等と違って少しの関わりがあったからか?
いや、そんな単純じゃねぇな…。

自分でも言い表せない胸の突っ掛かりはその日以降の俺を苦しめた。

次の日、何時もより早く目が覚めた俺は随分と余裕を持って学校へと向かった。

野球部の朝練の声が響く廊下を1人歩いていると、相談室へと消えた生徒が見える。

何だか見たことのある背中だ。

その後教室へと向かえば昨日みょうじが座っていた机に既にアイツの鞄がある。

早ぇな、もう来てたのか。

となれば、やはり先程の見覚えのある背中はみょうじのものである。しかしその背中が消えていったのは相談室だ。昨日の腫れた目元と何かしら関係があるのだろうか。

教室に1人、普段から眉間に刻まれているシワを更に深いものにして考え込んでいると、チャイムがなった。そういえば既に周りにちらほらとクラスメイトの姿が見える。チャイムから少し遅れてうつむき加減のみょうじが教室に入ってきた。

「おい、みょうじ。おは…「相変わらず暗い顔してんじゃねぇーよ、こっちまで暗い気分になっちまうだろうが。」」

俺の声と被って、俺よりも高い声色の、まだ声変わりのしていない男の子の声が聞こえた。

その声の主に視線を向けると、なるほど。昨日からずっとみょうじの前の席をキープしてたのはお前だったか。いつだか俺がみょうじのキーホルダーのぬいぐるみを壊してしまった際に、直して教室に届けに行ったらからかうようにみょうじに言葉を投げていたそいつ。

そいつは相変わらず、少し睨み付ける様にみょうじを見つめた後、前を向いて座り直した。

そんなに嫌なら他にも空いてる席もあんだし、別のところに座りゃあいいのによ。

そいつのせいでみょうじには何も聞けることなくまた今日が始まってしまった。
しゃーねぇ、放課後辺りにでも話しかけてみるか。


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