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3.オオカミさん


始業の鐘と共に空き教室に入った俺たちは、片やビクつく彼女と向かい合い、片手を差し出した。

「…えっと‥」

「ぬいぐるみだよ、貸せ」

「はっ、はい」

慌てて俺の掌に似つかわしくない可愛らしいぬいぐるみが乗っけられる。

それを持ったまま机に腰を掛け、ポケットを漁る…がそこで俺の動きは止まった。

(しまった、よく考えりゃ裁縫道具なんざ持って来てねぇな…)

どうしたものかと眉間に皺を寄せ、考えてると

「あのっ…!」

嬢ちゃんが口を開く。驚いて瞳を瞬かせ次の言葉を待っていると

「あの…私、なんて食べても…美味しくない、ですよ」

…んん?
食べる?何の事を言ってんだこの嬢ちゃんは。

「まだ、子供ですし…む、胸とかも、小さい…ですし…」

ああ、なるほど。合点がいった。
この嬢ちゃんは俺に襲われるかと思ってた訳だ。
まぁこんな不良にいきなり空き教室なんざに連れて来られりゃそう捉えても仕方ねぇか。

しかしまぁなんとも分かりづらい言い回しに思わず笑みが零れた。

「ははっ、別に俺は嬢ちゃんを食おうとしてここに連れて来た訳じゃねぇよ。
ぬいぐるみ、直してやろうかと思ったんだがなぁ…今は道具がなくてな、ワリィな」

そう言ってぬいぐるみをポケットにしまいこむ。

「嬢ちゃん、名前は何て言うんだ?」

「…みょうじ、なまえです」

聞けば隣のクラスだった。

これが俺と嬢ちゃんの初めての出会いだな。

思い返せば結構な話じゃねぇか。

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